「経済制裁で拉致解決を」という言説が溢れている。しかし、現実の制裁の有効性は乏しく、むしろ事態膠着の可能性すらある。

成果のなかった2.11日朝政府間協議――浮上した経済制裁法案
1月29日に衆院を通過した「外為法改正案」では、これまで経済制裁の発動は国連決議や日米など二国間の国際的合意が必要条件となっていたが、改正案は「わが国の平和および安全の維持のため特に必要がある」と政府が判断した場合、閣議決定を経て日本単独で輸出入や送金を停止できるようにする内容だ。また、議員立法で提案が準備されているのは「特定外国船舶入港禁止法案」と「出入国管理法改正案」(再入国禁止法案)だ。

これらの法案は、<拉致問題解決のために対北朝鮮交渉カードを持つ>という趣旨で準備されて来た。しかし、私はいくつかの点で、各法案の今後の行方に危惧を感じている。それは(1)拉致問題解決のための手段としての<制裁カード>が、制裁それ自体が目的化して行き、「制裁が解決の障害になる」という本末転倒な事態が憂慮される。(2)法案の中に、到底容認できない反人道的性質が認められる(3)そもそも、経済制裁にいかほどの効果があるのか?という点だ。
政治家やメディアからも一層の圧力を求める声が高まっているが、「経済制裁の政策としての有効性」について緻密な分析や議論もなく、<感情>と<勢い>に流され、外交も言論も浮遊していると思えてならない。

拉致問題は後回し?
日朝政府間協議が1年半ぶりに実現したこと自体を圧力の成果と見る向きもあるが、残念ながら、北朝鮮に対する認識の甘い、自意識過剰なものと映る。北朝鮮にとって最優先の外交課題は、25日から開催される核問題を巡る6カ国協議をいかに有利に展開するかだ。体制存続を左右しかねない米国との交渉の実質的な第1ラウンドであり、拉致問題はできるだけ蚊帳の外に置きたいはずだ。だから拉致問題を後回しにする環境作りのため、日朝協議に応じたと見るのが自然だ。
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