【物乞いの子  北朝鮮への経済制裁で真っ先に打撃を受けるのは民衆だ。写真は筆者に食べ物を乞う少女(98年4月咸鏡北)/ASIAPRESS】

貿易統計から見る効果の薄さ
「経済制裁という圧力をかければ、北は折れてくるはず」という主張は、貿易統計を見ても根拠が薄い。
■日朝貿易は一昨年から大きく減少し、03年度の対北朝鮮貿易実績は、
・トップは中国で、10億2354万ドル(輸出6億2799万ドル、輸入3億9555万ドル,韓国貿易センター発表)で前年比38.7%増。
・二位は韓国(厳密には域内交易扱い)で、7億2422万ドル(出入りの記載見当たらず、韓国統一部発表)で前年比12.9%増。

・一方日本は、総額2億7800万ドル(輸出9600万ドル輸入1億8200万ドル,財務省速報)で、三割の大幅減少だ。
・全体における日本の占有率は01年が21%,02年が16.3%だが、03年は10%強に下がった(韓国貿易センター発表)。貿易取引量は韓国、中国の2国で約7割を占めており、日本は他に北朝鮮への送金が40億円ほどあるが、それを含めても1割強にしかならないのだ。
日本の昨年の占有率が減少したのは、国土交通省が船体安全検査の運用を厳格化したことから、北朝鮮が整備不良船の使用を自粛したこと、対北朝鮮感情の悪化によって貿易を控える商社が少なくなかったこと、また朝鮮総連の財政力低下によるものと見られる。また、第三国を迂回させる取引も増えたと見られる。

単独経済制裁では圧力にはならない
さて、この数字を見て常識的に考えられるのは、仮にすべての金と物の流れを止めたとしても、金正日政権は「痛い」とは感じるだろうが、「参った」とはならないだろうということだ。
北朝鮮への影響力が強い韓国、中国に制裁への同調を呼びかけても、対北朝鮮政策の優先順位が異なるため、拉致問題だけで同調する可能性はゼロと言っていい。

日本には金正日政権に外交方針を変更させる、即効性のある外交的パワー、貿易実績のパワーはないのだ。それが現実である。
日本の単独経済制裁では、北朝鮮政権を崩壊させることは絶対にありえない。このリアリズムをもとに政治家は政策を考えねばならない。
ところが「経済制裁を課して北朝鮮を崩壊させて拉致問題を解決せよ」などと戯言を喚く無責任な政治家が少なくない。
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