肉親が戻ってきたことを喜ぶよりも、「みなさまにご迷惑をおかけしました」と幾度も深々と頭を下げなければならない。一週間監禁されていてもあんなに元気だった人が、日本に帰るなり、笑顔をなくし、立っていることすら難しいほどのストレスを受けなくてはならない。

我々の祖国とは、どういうところか、今回はまざまざと教えられた。台湾がイラクに類する事態に巻き込まれたら、私も彼らと同じような行動をとるだろう。妻に、同様の事件が発生しても、政府に助命など求めないで欲しいと宣告すると、妻はもとからその気はないふうで、保険はおりるかしらと、もっぱらそらちのほうが心配らしい。

いずれにしろ、海外居住者にとって、しかも公務員でも大会社の社員でもない者にとって、今回の事件の「日本での展開」が、心の底に残した汚泥はとても重い。おそらく日本の少年少女たちに投げかけた暗雲も当分消えないのではないかと危惧する。

人質解放は、台湾でも実務的に報道されている。最大手紙「中国時報」は、日本政府がカネで決着したのだという。ご丁寧に、聖職者協会にモスク一個分、1竏窒R億円を寄付することで決着したと、金額まで明示されている。

この報道の根拠は?ときいたら、この新聞の東京駐在員は目を丸くするに違いない。台湾の記者は、裏付け取材をしない。噂や伝言をそのまま記事にして日々垂れ流す。それが仕事だと思っている。楽な商売だと思われるかもしれないが、それだけに社会的地位は低く、こちらでは40を過ぎた記者というものをほとんど見ない。

総統就任式に50万を動員して防衛するとした民進党のプランは、さすがに挑戦的であるとして、目標をその半分に減らしたらしい。対抗する親民党のなかには、全国総動員をかけて就任式を包囲すると息巻いている人がいる。中間に立つ中国国民党は、連戦主席以下動揺が続く。ナンバーツーの馬英九副主席(台北市長)が、親民党の宋楚瑜主席と一線を画す姿勢を次第に明らかにして、両者の不仲が取り沙汰されている。
(04年4月21日)