戦場のミスは死に直結するわけですが、ミスを全く犯さない戦場取材はありません。橋田さんが常々言っていました。「ミスを犯して自分の命を落とすことになっても、それは本望である」。いつもその様に思っていないと、ジャーナリストという仕事はできないでしょうね。事故があったから駄目だという話ではないんです。

去年も四十数人のジャーナリストが世界の様々な現場で殺害されています。ジャーナリストという仕事はそういうものだし、それ以上でも以下でもない。僕自身は戦場ジャーナリストを気取るのはとても嫌いです。我々は我々の仕事を淡々とこなすだけです。今、イラクの現場で最も伝えなければいけないことはイラクの人達の被害の現場であることはいうまでもないことです。

この戦争を最初から見てきましたが、最も伝えられていないことはイラクの人たちの被害なんです。ファルージャで800人が殺害されたことは歴史に残る大虐殺です。安田君達が現場に行って記録したいと思うのはジャーナリストとして当然だし、それは高く評価すべきだと思うんです。ファルージャの虐殺等々が、きちんと世界のメディアに毎日のように流れていれば世論も大きく変わったはずです。

何故この正当性のない戦争を政府は支持し、その日本政府をみんなは支持しているのかを考えてみた時、イラク側、つまり殺される側からのリポートが圧倒的に少なかったのではないかという反省を僕は持っています。イラクにおける米軍の占領支配がイラクの人達をどれだけ傷つけているのかという視点でリポートされることが最も重要なことだと思います。

話を進めますと、政府が「自己責任」論というものを出してきました。読売新聞などは政府が常に邦人保護に心を砕いており、政府の誠意(親心?)を踏みにじるような形でイラクに入ったあげく、人質になって迷惑をかけているというようなことを書いています。

僕も二十数年間、いろんな紛争の現場で日本大使館に行きましたが、日本政府は邦人保護をほとんどやっていないですね。2月にバグダッドの大使館にも行きましたが、その時に日本人職員は一人も出てきませんでした。4月に人質事件があった時も、大使館員は出てこず、警備員が連絡先の電話番号だけ渡したそうです。
外務省の中に邦人保護課というものができました。
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