麻痺しているのかも。
野中
うん、麻痺しているのか、それとも…。

ないのか…。
野中
うん、そうなのね。麻痺している、もしくはそのような感性がないのか。そういう政治家を指導者にいただく国というのは、やはり国民がかわいそうだと思うんです。アメリカの兵士だって、僕がイラクに行っても20歳前後の若い兵隊たちというのはたくさんいるんだよね。女性兵士も多いし、本当にアメリカのハイスクールからそのまま来たような兵隊たちがたくさんいてね、そういう彼らも人を殺したり、あるいは殺されるという中で生きているわけでしょう。決して幸せじゃないし、そういう兵隊たちもイラクで900人ぐらい亡くなっているわけだよね。だからそれはイラクの人たちを殺しているだけではなくて、アメリカという国も実は大きく傷ついているわけなんだよね。だけど、そういう部分が余り報道もされないし、政治家もそういう事実を「それはもうやむを得ない犠牲だった」というような話しかしない。しかし、そういう話を日本の学生たちにしても、学生たちの受け取り方というのも「テレビで起きているイラクの出来事」という感じ方なんだよね。そこで起きていることに対して自分たちにも責任があるという意識がまったくないという…。

ないんでしょうね。
野中
うん、ないのだろうね。だからその辺についても、僕はずっと考えているんですよ。どうしてなのかなと思ってね。日本はアメリカが行ってきた戦争に対して支持をしているわけで、その支持のもとにアメリカも軍事行動を起こすわけですよね。だから、そこで起きたことに対しては、決して僕たちと関係のないことではないんです。日本は、これから50億ドルというお金を出すわけですよね。5,000数百億円というお金をイラクの復興に出したりするわけで、自衛隊も多国籍軍に参加するわけだし。今、航空自衛隊もアメリカ兵を輸送したり、いろいろな戦時物資を輸送しています。これはもう完全に戦争をする側と一体化しているわけでしょう。そういう中でイラクの人たちがたくさん殺されているという現実に対して、自分たちもそれにかかわっているという自覚がまったくない状況があるんです。

頭でしか考えていないとでも言うのでしょうか…。心では感じていないのでしょうか…。「仕方がない」という範囲でしか受け止めていないのでしょうか…。
野中
仕方がない…とかね。
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