裁判所も爆音による侵害は違法と認めている
米軍機による爆音被害を無くすためには、米軍・米政府への抗議や申し入れ、自治体・日本政府への陳情や請願などだけでは効果があがらないとして、厚木基地周辺の住民の間から起こされたのが、厚木基地爆音訴訟である。

「厚木基地爆音防止期成同盟」を中心に、1976年提訴の第1次訴訟(原告92人)、1984年提訴の第2次訴訟(原告161人)、1997年提訴の第3次訴訟(原告5047人)と続いてきた。
第1次訴訟と第2次訴訟では、国を相手取って米軍機の飛行差し止めと爆音(騒音)の損害賠償を求めた。

それぞれ最高裁と高裁まで争い、19年間と15年間にも及ぶ長期裁判だったが、どちらも「日米安保条約に基づく米軍機の運行には、日本の民事裁判権は及ばない」という理屈で、飛行差し止めの請求は却下された。ただ、「爆音は受忍限度を超え、爆音による侵害行為は違法」として、損害賠償を認める判決だった。

050406g3_05.jpg【写真:第4回目の公判が開かれた3月3日、東京高等裁判所前に集まった原告団の人びと】

だが、「爆音は違法」との判決、司法判断が出たにもかかわらず、日本政府は爆音解消に向けて真剣に取り組まない。そこで起こされたのが、5000人以上の大原告団による第3次訴訟である。

原告団に高齢者の多いこともあって、裁判の長期化を避けるためと、速やかな勝訴で日本政府に猛省を迫るために、第3次訴訟では飛行差し止め請求はせず、損害賠償に的を絞った。その上で、損害賠償区域をW値(騒音のうるささ指数)75の区域にまで拡大させること、国側の主張する「危険への接近論」(爆音があることを知っていて居住したのだから、損害賠償の対象にはならないという論理)を論破することを目指した。

2002年に横浜地裁で下された判決では、原告側の主張がほぼ全面的に認められ、総額27億4600万円の損害賠償の支払いを国に命じた。損害賠償区域の拡大も認められ、「危険への接近論」も否定された。裁判長は判決の中で、「爆音に苦しめられている住民に対して、国は本腰を入れて真摯な態度をとっているとは考えられない」と、国の姿勢を強く批判した。

ところが、国側が東京高裁に控訴したため、裁判闘争は続いている。今年3月3日に第4回公判が開かれ、7月26日には結審、今年度内に判決が出される見通しだ。原告団と弁護団は、「公正かつ憲法が生きた判決を」と、日本社会全体に向けても広くアピールしていきたいと表明している。
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