※付言すると、労働党の組織が、目を付けた者の個人評価をしかる形に書けば「革命化対象」となる。朝鮮の「管理所」は、人民保安省あるいは国家保衛部によって「罪」を捏造された文字通り罪もない人間を送り込む所だ。

私の父は、経済部門に勤める口数の少ない実務家だった。

私の記憶が正しければ、平壌の◆◆地区にある第二経済委員会の◆◆局の局長だった。◆◆局長は「四年以上もたない」と言われる激務だった。
父は以前、国家計画委員会で働いていたこともある上、元々経済計画の専門家で数字にも強く真面目なので、その仕事を任されたのだと思う。
◆◆局長として赴任した父は、まず、ある重要な加工機械を中国から導入することにしたそうだ。その機械は、以前から第二経済委員会が何度か輸入しようとしたが成功しなかったという、いわくつきの機械だった。
ところが、新任の局長が着任早々その導入に挑戦を始めるや、それが癪に障ったのか、先任の者たち、特に党秘書とその側近勢力は、導入を強く牽制したという。

「それはダメだ。我々の力では絶対に無理だ。国家の問題として提起してからでないと、われわれだけでやってはいけない」
というような反対意見に対し、一本気の父は信念を持ってこう言った。
「これさえやり遂げれば、将軍様の方針を頂けるし、そうすればわれわれも力を付けることができる」
今になって思えば、その機械が革命と建設のためにどうしても必要で、国家の利益にもなるということもあったのだろうが、父が、個人的な出世欲のために導入しようとした部分も多少あったのだと思う。
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