同じ時期に入ってきた男に、軍隊出身のせいか、ちょっと気が荒いのがいた。
一日の仕事が終わり、生活総和に参加しろという指示が下りたのに、彼はそのまま家に帰ってしまった。
翌日、皆が集まったところへ、副坑道長という人間がやって来て、彼を呼び出すなりビンタを一発くらわした。
「痛っ! どうして殴るんだ!」

「このガキ、なめやがって!」
そう言ってもう一発殴る。三発ぐらい殴ったところで、彼もとうとう頭にきたようだ。
「てめえ、やるか!」
「こいつ、生意気な野郎だ」
副坑道長はそう言ってまた後頭部を叩いた。すると、軍隊では格闘技の腕もかなりなものだったという彼は、あっという間に副坑道長を押し倒し、殴りかかった。

通報を受けて駆けつけて来た十数名の警備隊員たちが、彼に手錠をかけて、めちゃめちゃに殴り始めた。
「この共産軍野郎! 悪い癖を直してやる(「共産軍」ということばについては「人民軍は栄養失調続出」の注1を参照)」
警備隊員たちは人を殴りたくてウズウズしていたかのように彼を半殺しにし、「無報酬」にぶち込んだのだった。
(つづく)

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