先軍政府は「市場へ遅刻」した者であるこの中・下層幹部たちと核心階級の陣地を捨てて、今、ジャンマダンの最優等生である新興の商売人と手を結んでいる。階級闘争優先主義から「黄金万能主義」に価値観が確実に変わったこの社会には、新しいイデオロギーが誕生したと考えるべきだ。
すなわち、改革開放の芽は、現実にはすでに生えているのだ。幹部や人民たちの志向は、とっくに豊かさを求める方に変わった。

これからは、好むと好まざるとにかかわらず、国家や執権層もこのような志向に従っていくようになるだろう。「総合市場」(都市部の合法市場)がその最たる例だ。まだまだ時間はかかるかもしれないが、(保守的な執権層の)主観的な欲望で歴史を先延ばしにしたり繰り上げたりすることはできないことだけは確かだ。

石丸:現実の動きを例をあげて欲しい。
ケ:明らかな例としては「社会主義建設の一二一一高地」(注3)と言っていた金策(キムチェク)製鉄所を見てみよう。その一二一一高地を無理に運営して鉄を生産すれば、原価は国際価格よりずっと高くなる。今までは、そのようなやり方以外に他の運営方式がなかった。
しかし、ジャンマダンの現れた今はどうなったか。「実利」を計算するようになった。だから「主体朝鮮」の時代には想像できなかったことが起こった。茂山鉱山で生産される精鉱を金策製鉄所に送らず、直接中国に売った。一二一一高地を捨て「実利」を選択したというわけだ。それより他に道がなかったのだ。

歴史というのは、このように、人間社会が現実の変化に適応していくことなのだろう。特別なことではなく、外国でもすっかり当たり前になった経済常識が、朝鮮でもやっと少しずつでも通じるようになったということなのだろう。これまでの無知蒙昧な朝鮮のレベルなら進み具合もまたこんなものだろう。
改革開放の必要性は少し認識したが、改革開放をどうやればよいのか、その方法を誰も知らない。上層部も国家も、その実践に必要な具体的方法や手段を持っていない。

だからといって、チャンスが降ってくるまで座して待とうという者は愛国者ではない。軍隊や党、国家にばかり任せず、愛国者たちは進み出て、そのための研究討論の場を自律的に作っていかなければならないと思う。我が国の経済問題は、社会全体の動きを見て解決していく問題であり、小集団の独断や主観的な欲望で解決できる性格の物ではないのだ。愛国の志をもつ者であるならば、討論の場に参加して具体的な方法を考え、執行できるようにならなければならない。
(つづく)

注1 計画経済下において「利潤」とは、資本主義の市場経済用語だった。
注2 配給途絶による「苦難の行軍」の時期、党と首領に忠実な核心階級は、「私に一%の変化も期待するな」という金正日の宣伝をそのまま信じた。苦難は「一時的現象」だと考えて一年一年我慢し耐えてきた。二〇〇二年七月一日に経済改善措置が発表されて市場活動が合法化されてやっと、苦難が「一時的現象」ではないことを悟り、遅れに遅れ市場活動を始めた。朝鮮ではこれらを「市場への遅刻」と呼ぶ。
注3 江原道は朝鮮戦争期に激戦が闘われた地区だが、南北激しく取り合いをしたのが一二一一高地。北側はその高地を渡すか死守するかによって、元山を手放すかどうかの岐路に立ったという。その重要性を金策製鉄所が経済建設に占める地位に比喩して一二一一高地という。

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