◆社会的・政治的背景
I 二〇〇七年、金英日(キム・ヨンイル)内閣になってから取られた食糧関連の措置は、一一二号土地制度(注1)の撤廃であった。
II それまで実権を握っていた李済剛(リ・ジェガン)党組織部副部長を押しのけて張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長(金正日の妹婿)が実権を回復し、政治的報復の一環として経済部門の貿易担当者らに対する粛清が大規模に行われた模様だ。
この影響かと思われるが、対中貿易がかなり萎縮した。

同時に先軍政治(軍事優先政治)の下で雨後の筍のごとく乱立していた、軍部傘下の貿易会社の整理が開始され、一九九〇年代のような政局の混乱が見られた。
対韓国ラインも全面的にメンバーが入れ替わった。これは六カ国協議や対米会談の担当者にとっても、当然圧力として作用した。
III 昨年一〇月に韓国の盧武鉉大統領の平壌訪問を機に、またもや全国的な市場抑制措置が取られた。
既に別の記事で指摘しているように、一〇年に及ぶ「太陽政策」によって、朝鮮の住民の多くが、韓国に気持ちが傾くようになっていたが、先軍政権はそれを食い止めることを狙って二〇〇七年の市場抑制措置を取った。

◆国際的な背景
I 前述したように、近隣国の中国との貿易が厳しく規制された(正確な理由は調査中である)。一方で、朝鮮からは地理的に遠く離れているベトナムとの新たな貿易ルートを開拓する政策が始まった。
II 国際的に原油価格と穀物価格が異常なまでの上昇を見せた。

III 国際機関によるモニタリングに抵抗感を持つ朝鮮当局は、支援のやり方を食糧の受け取りから農業構造支援へと変更するよう要求、これが受け入れられた結果、朝鮮に対する国際的な食糧緊急支援体制は縮小されるに至った。
(つづく)

注1 一一二号土地制度は勤労者への国家の食糧供給体制が麻痺し、その復旧が困難な状況の中、企業出勤率アップを目指して、朴鳳柱(パク・ボンジュ)内閣(二〇〇三縲恣Z〇六年在任)期に実施された食糧政策。
配給される穀物現物量の六ヶ月分相当が生産できる農耕地が各企業に分与された。
当初はさまざまな反対があったが、定着していくにしたがい、一定程度食糧の安定生産に成果があったが二〇〇七年初めに廃止された。これにより、昨年は勤労者の六ヶ月分の食糧問題が新たに発生することになった。

08年食糧危機の実態と背景を探る 5(リュウ・ギョンウォン
08年食糧危機の実態と背景を探る 4(リュウ・ギョンウォン
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