「リャンさん、いま一番人気のある商売が何だかご存知?」
父親の前だからか、彼女があらたまった口調で話しかけてきたものだから、私はすっかり面食らってしまった。
と同時に私は、父親の言うことを聞かずに、自分から商売の道に飛び込むだけあって、ヨンスンはただ者ではないなと思わずにいられなかった。

「ギソク君、私もとうとう娘から商売の話を毎日のように聞かされるようになってしまったよ。ハハハ」
「そうですか先生。私だってひょっとすると商売人気質なのかも知れませんよ。それはそうとヨンスン、最近はどんな商売が流行ってるの?」
父親の前だということはどうでもよくなったのか、彼女はいつもの通りの言葉づかいに戻った。

「あのね、今は油が一番人気なのよ。鼻の利く人はみんなそっちに回ってるわ。今は軽油が一キロ二五〇〇ウォン(〇八年一月当時)もするから、けっこう資金が要るのよね。おまけに、誰かしら(権力を)抱き込まないといけないし。でも、そうすれば、お金がお金を生むの。

そういう時代が、来たのよー」
そう言った彼女も、父親と目があった途端、慌てて口をつぐんだ。だが、これをチャンスとばかりに、私はヨンスンの言葉を受けて返した。今年こそは、学者である先生にも、こういう類の話に加わってもらえたらという期待が急に湧いてきたのである。
「で、何人ぐらいがやってるんだい?」
「誰にでもできるってもんじゃないのよ。一つの区域や郡で平均一人か二人ってとこかしら。何しろ元手がすごくかかるの」
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