国境沿いの村で出会った脱北難民の少年たち。左から17、15、13歳で、3人とも親が亡くなったか行方不明だという。シラミがいるからという理由で、保護している家で頭髪を刈られた。(1998年4月中国延辺朝鮮族自治州 石丸次郎撮影)

国境沿いの村で出会った脱北難民の少年たち。左から17、15、13歳で、3人とも親が亡くなったか行方不明だという。シラミがいるからという理由で、保護している家で頭髪を刈られた。(1998年4月中国延辺朝鮮族自治州 石丸次郎撮影)

インタビュー:強制送還された脱北女性の証言3
聞き手 石丸次郎

◆〈インタビュー 1〉Aさん (3)
予審と裁判
Q:拘束されていた六ヶ月間の間に予審(裁判のための取調べ)を受けるわけですが、予審は何日間ありましたか?
A:私たち脱北者たちの予審は長くないです。一日程度。作成された調書に拇印を押せば終わりです。「私は中国に行って、コレコレこのように過ごしました」と認めて拇印を押すと、それで検察の調べを認めたということになり、裁判を受けるのです。

Q:取調べの時、中国で子供を産んだと言ったと言いましたね。それは強要されて言ったのですか?
A:強要されたのではなくて、子供を産んでいたと言えば、少しは取調べが楽かなと思ったから。私の場合は一〇年も中国に住んでいましたから、子供もいなかったらその間何をしていたのかをいちいち全部答えなければなりません。取調べ官たちは細かく問い詰めるので、精神が参ってしまいます。

Q:今、国際的に朝鮮の人権問題について注目が高まっているため、形式的なのでしょうが、予審過程に国家が決めた弁護士が一緒に座って調査を受けるという証言を聞いたことがありますが。
A:予審の時はそんなのありません。私たちみたいな者には、中国に行って何をしていたのかを調べるだけですから、弁護士はいませんでした。
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