コメの値段は北朝鮮経済の状態を示すバロメーターだ。変動幅が大きい時には必ず内外に不安定要素がある。写真は平壌江東郡の路傍で少量のコメを売る女性たち。(2008 年8 月 チャン・ジョンギル撮影)

コメの値段は北朝鮮経済の状態を示すバロメーターだ。変動幅が大きい時には必ず内外に不安定要素がある。写真は平壌江東郡の路傍で少量のコメを売る女性たち。(2008 年8 月 チャン・ジョンギル撮影)

 

インタビュー 三人の女性が吐露する金正日体制への本音(1)
取材:石丸次郎/整理:リ・ジンス

デノミによる社会の紛乱ぶりを具体的に、詳細に見ていくために、前稿で紹介した三人の北朝鮮女性と行ったロングインタビューを掲載する。
国際金融危機の影響や、韓国との関係を悪化させたことによる観光収入と支援の大幅な減少によって、二〇〇八年から北朝鮮経済は大変な苦境に陥っていた。

さらに市場活動の統制が強化されたことで、国内の経済活動は著しく委縮してしまった。一般庶民はまさに青息吐息の状態であった。そこに突然断行されたのが「貨幣交換」措置であった。経済秩序がさらに乱れてしまったことは想像に難くないが、加速がついたのは民心の離反であった。

■インタビュー 1 カンさん 上
紙くずになってしまったお金

Q:貨幣交換のせいで大変な損をしてしまいましたね。
カン:そうですよ。中国に品物を仕入れに行こうと思って借りただけなのに......。私はたった一日で一〇〇〇万ウォンの借金を背負ってまったことになるんですよ。私はそのお金で何も贅沢したわけじゃない。言うなれば、国家のせいでできた損失なんだから、裁判でもやってやるとけんかしたわけです。

Q:返せない場合にはどうなりますか?
カン:返せないときは、貸主は私を訴えることはできるでしょう。そうすると詐欺罪で教化刑(懲役刑)になるかもしれない。大体三年くらいかな。監獄に行ったら借金を返す必要がなくなりますが、今の朝鮮で三年の教化刑というのは地獄に行くようなもんです。借金の代わりに教化刑を受けて死ぬ苦労をするのか、毎月少しずつでも返していくのかといえば、それはもう、返すしかない。

Q:どのように返済するんですか?
カン:それはまだ決まっていません。

Q:利子のようなものは?
カン:本来ならばひと月で一〇%です。最近はみんなそうです。まったく信用の無い人は三〇%という場合もあります。私は知人から借りたんで一〇%です。

Q:ひと月一〇%とは高いですね。そしてお金が紙くずになってしまいました。
カン:(諦めた様子で)正直言って、今回銀行に預けたお金を引き出せるなんて、誰も思っていませんよ。そもそも国のことなんて信じていませんから。

Q:庶民は一〇〇対一で一〇万ウォンまでしか交換できませんでしたが、権力者たちは際限なく交換したとは考えられませんか?
カン:もちろん(権力のある人たちは)いくらでも換えられたはずですよ。実際、力のある連中は銀行と組んでそうやっていましたよ。

Q:混乱している中で、政府からは何か通達がありましたか? 騒ぐなだとか、そのうちきっと良くなるから我慢しろだとか。
カン:人々があんまり不満の声を上げるので(限度額以上の金は)「国家に保管しろ」「銀行に預けろ。一年以内に全部返してやるから」などと言っていました。でも、誰もそんなこと信じません。返すと言ったって何を返すのやら。国にお金がなくて、にっちもさっちもいかなくなっているというのに。
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