対外関係はどうなる?
中国は北朝鮮の最大の友好国であるが、冷戦時代のように「運命を共にする陣営」に属しているわけではない。
中国が、ビルマ(ミャンマー)の軍事独裁政権を、国際社会の批判を浴びながらも支持しているのと同様に、北朝鮮を支持しているのは自国の利益のためである。

北朝鮮には、中国が欲しい鉄鉱石や銅などの資源が豊富にあり、政治・軍事上の戦略的位置が重要、そして中国製品の市場としてビジネス上利益がある。理念やイデオロギーなど関係ない。国益である。

中国と国境を面する北朝鮮の炭鉱都市、茂山(ムサン)。世界屈指の埋蔵量を持つ鉄鉱山、茂山鉱山に対し、中国は数年前から投資を続けている。手前の川は豆満江。2010年7月 撮影:アジアプレス取材班

中国と国境を面する北朝鮮の炭鉱都市、茂山(ムサン)。世界屈指の埋蔵量を持つ鉄鉱山、茂山鉱山に対し、中国は数年前から投資を続けている。手前の川は豆満江。2010年7月 撮影:アジアプレス取材班

 

逆に言うと、中国にとってもっとも困るのは、突然の体制崩壊を含めた予測困難な混乱である。北朝鮮がやくざな独裁政治をやっていようが、人民が艱難辛苦にあえいでいようと、中国には関係がない。安定していてくれればいいのである。
東アジアでは、オバマ、李明博政権が登場後、政治・軍事的に日韓米の協調が進んだ。

中国は自国の前庭で、政治・軍事的主導権を日韓米に譲るわけには行かず、先の「天安艦」撃沈事件の時のように、北朝鮮包囲網ができて緊張が高まることを看過できない。
このような小競り合いがあると、日韓米に対して対抗的な立場をとるしかなくなり、必然的に北朝鮮支持の度合いを強めざるを得なくなる。その点を北朝鮮は熟知している。

政治・軍事的緊張を、あえて度々作り出し、中国をうまく自分側に立たせるよう、東アジアで「ミニ冷戦」のような状況を作る戦略を立てていると思われる。
中国がもっとも憂慮しているのが、前述したとおり、北朝鮮の経済混乱による体制の突然の自壊だろう。
例えば国境秩序が無統制になると、北朝鮮からは数百万の難民が押し寄せる可能性が現実的にきわめて高い。

昨年8月、中国政府は吉林省の長春・吉林・図們江(朝鮮名は豆満江)地域の開発を国家プロジェクトとして進めることを決定した(長吉図開発)。
この地区に隣接する北朝鮮を「長吉図開発」に組み込むことで、東北地区の振興と北朝鮮の経済浮揚を同時進行させようとしている。
そのために、金総書記が今年二度にわたって訪中した際には、ビルマのように中国に対する開放措置を強く迫ったといわれる。

いずれにせよ、「ボスト金正日体制」が不安定化することを中国は恐れており、体制の崩壊を未然に防ぐことが中国の対北朝鮮政策の要となっていくだろう。
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