だが現状は、体制維持のために最重視してきたこの核心部分に対してすら、金正日政権は食糧配給をまともに出せなくなっている。この「優先配給対象」の食糧確保の方法は次のようなものだ。

i 国家や企業所・機関による配給。
ii 市場で現金で購入。
iii 庭や非農地などでの自家栽培。

(イ)協同農場員世帯
韓国統計庁の推定では総人口の約三七%となっている。食糧確保の方法は、
i 農場での収穫後の分配。
ii 市場で現金で購入。
iii 庭・非農地などでの自家栽培。
iv 農場の収穫物を盗み隠匿したもの。

(ウ)配給途絶グループ
食糧配給も給料もほとんど出ていない、主に都市住民たちである。現在、ほとんどの一般企業所の労働者、教員や鉄道員など公共サービス従事者もほぼここに含まれる。人口の四〇~五〇%程度と推定される。食糧確保の方法は、
i 市場で現金で購入。
ii 庭・非農地などでの自家栽培。
(ここでいう非農地とは、個人が役所や企業所に金を払って耕作している傾斜地や狭い土地のこと)
一方北朝鮮政府は、従来次のようにして食糧を確保してきた。

i 協同農場の生産分。
ii 各企業所や機関が耕作する田畑の生産分。
軍や警察も田畑を持ち耕作している。拘禁施設で生産される農産物も相当な量になると思われる。一例は本誌四号で報じた平安南道の甑ジュン山サン教化所。ここは警察が管轄しており、収容者推定七〇〇〇人が農作業に従事させられている。生産物は警察官の配給に回されたり市場に販売されたりしている。

iii 輸入。
iv 国際社会からの援助。
金正日政権が国際社会に食糧援助を訴えているのは、i ii iiiによって「優先配給対象」に供給する食糧が確保できていないからに他ならない。「優先配給対象」がどれ程深刻な事態になっているか、北朝鮮内部からの報告を記したい。
(つづく)

〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(1)-1
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(2)-1
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(3)-2
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(3)-3
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(3)-4

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