アジアプレスは、これまで二十年近く北朝鮮内部と朝中国境で取材を続け、750人以上の北朝鮮の人々と接触してきた。北朝鮮の住民のほとんどは、94年から17年間続いた金正日総書記の政治を「失敗したもの」と受け止めている。90年代中盤には「苦難の行軍」と呼ばれる社会混乱を招き、多くの餓死者を出したし、その後も経済は回復することなく悪化の一途をたどってきた。一方で国民が市場で商行為に精を出し、国家の統制経済体制から自立しようという動きに対しては、介入と取締りを繰り返した。

さらに2009年には突然のデノミ(通貨ウォンを100分の一に切り下げ)を行い、商売にすがって細々と生計を立ててきた庶民の財産を紙くず同然にしたため、住民の金正日政権に対する不信と不満は、決定的に強くなってしまった。金総書記死去の報に接した住民たちが、冷淡とも取れる反応をしているのも、経済失策による生活悪化に負うところが大きい。

さらにオ・ソンリムは北朝鮮住民の不満をこう伝えてきている。
「『将軍様は17日に死亡していたというのに、なぜ今になって人民に知らせるのか』という不満を顕わにする人がいます。『すぐに発表しないのは、住民が動揺して反発するんじゃないかと、住民を疑いの目で見ている証拠だ』と言っていました」
北朝鮮メディアによると、来たる28日に金総書記の葬儀が営まれ、29日までは哀悼期間だという。北朝鮮の住民は今後、哀悼期間中に催される様々な追悼行事に参加することになる。

アジアプレスでは北朝鮮国内に中国製の携帯電話を数台搬入し、北朝鮮内部のパートナーと取材を行っている。
[取材=オ・ソンリム(呉成林) 整理=リ・ジンス(李鎮洙)]

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