親と暮らせない子どもたちと、隣り合う保育士たち。そして、子どもとふたたび暮らすことを願う親。児童養護施設「光の子どもの家」の日常を8年かけて追ったドキュメンタリー「隣る人」(となるひと)を公開した刀川和也監督へのインタビュー。(聞き手:編集部)

親と暮らせない子どもたちと、隣り合う保育士たち。そして、子どもとふたたび暮らすことを願う親。児童養護施設「光の子どもの家」の日常を8年かけて追ったドキュメンタリー「隣る人」(となるひと)を公開した刀川和也監督へのインタビュー。(聞き手:編集部 執筆:玉本英子)

 

僕がそれまで生きてきたなかで、小学校に誰かが乱入して無差別に人を殺したっていう事件の記憶はありませんでした。とても衝撃的な事件でした。
流れてくるニュースを見ながら、豊かだといわれている日本で、なぜこんなことが起きるのかって考え込んでしまいました。フィリピンで劣悪な環境の中で生きる子どもたちを取材した後だっただけに尚更そう感じたのかもしれませんが、その時の衝撃をいまでも鮮明に覚えています。
その後、宅間守っていう人を調べていくと、父親から虐待を受けた過去があることがわかりました。その当時、「虐待」っていう言葉がニュースのなかでも頻繁に使われるようになった時期でもあったと思います。

「虐待」ということをテーマにいろいろ調べていくなかで、子どもや家族の問題を評論してきた芹沢俊介氏の著書、『「新しい家族」のつくりかた』(2003年・晶文社)という書籍と出会ったんです。その本のあとがきで、『隣る人』の舞台である児童養護施設「光の子どもの家」のことがふれられていて、当時の「光の子どもの家」の施設長、菅原哲男氏(現理事長)の著書『誰がこの子を受けとめるのか 「光の子どもの家」の記録』を知ることになるのです。

それまで僕は児童養護施設についてまったく知らなかったのですが、子どもたちと本気で一緒に暮らすことを、試行錯誤と悪戦苦闘を重ねながら実践する「光の子どもの家」のあり方にとても興味を抱きました。

◆撮影のお願いに行ったとき、「光の子どもの家」はどう応えてくれたのですか?

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まず施設長の菅原哲男さんに手紙を書きました。前述の書籍のなかに「隣る人」っていう言葉が書かれていて、子どもがまっすぐに育つためには、そばに居続ける大人の存在が必要なんだっていうようなことに興味を持ったし、感銘も受けました。それで、僕もそこに居て、居続けて、撮影をしたいです、みたいなことを書いたと思います。

だけど、返事がなかなか来なくて。施設の方ではいろいろ考えていたみたいですね。それで、僕の方から電話をすると、とりあえず来てくださいっていうことで、実際に行くことになったんです。

以前、「光の子どもの家」はテレビ局から何回か取材をされたことがあって、延べ1時間ぐらいの番組として放送されたことがあるんです。だから、カメラを受け入れるスタンスがあるとは認識していました。それでも、どこの誰ともわからない僕のような人間が、いきなり勝手な思いを伝えて、受け入れてもらえたわけですから、「光の子どもの家」の懐の深さを感じます。

通常、ドキュメンタリー映画の制作においては、ある程度事前にリサーチして、構成を考えてみたり、誰をどういう風に撮っていくか、どんな作品にするかって考えて始めるものなんでしょうが、僕はそういうのをまったく考えていませんでした。そういう意味では「ド素人」なんだと思います。スケジュールも予算も考慮してっていうのが普通なんでしょうけど、とりあえず撮ることから始めました。そんな始まりだったんです。
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刀川和也(たちかわ・かずや)
アジアプレス・インターナショナル所属。フリーの映像ジャーナリストとして、2001年から2002年にかけて、アフガニスタン空爆の被害を取材、テレビ等で発表。その後は主に、国内及び東南アジアでカメラマン、取材ディレクターとしてテレビドキュメンタリー制作に携わる。述べ8年に渡る撮影を経て、「隣る人」を完成させた。本作が初監督作品。

[2011/日本/SD/85分/ドキュメンタリー] 企画: 稲塚由美子
撮影: 刀川和也、小野さやか、大澤一生
編集: 辻井潔
構成: 大澤一生
プロデューサー: 野中章弘、大澤一生
製作・配給: アジアプレス・インターナショナル
配給協力: ノンデライコ
宣伝協力: contrail
宣伝: プレイタイム
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『隣る人』 公式ページ(映画案内・上映情報)