学校でのコンピュータ教育も始まっている。官営メディアでは、金日成総合大学などエリートの通う高等教育機関のみならず、一般の中学校でも、積極的にパソコンを導入している様子をしばしば伝えている。

「地方都市の中学校には旧式のものが数台ある程度」(キム・ドンチョル記者)だというが、世界に遅れを取っていないという「見栄」もあってメディアで取り上げる側面もあるのだろう。

政府機関ではパソコンを積極的に活用している。九〇年に平壌に朝鮮コンピュータセンターを開設し、独自のソフトウェア、ハードウェアの開発、人材育 成の拠点としてきた。また住民情報はすでに全て電子化されているし、税関でもパソコンを利用してデータを管理している。〇五年に中国で出会った地方党機関 紙の記者だった脱北難民の男性によれば、出版や印刷における原稿のやり取りや入稿は、すでに電子メールでやっているとのことだった。

国内で閉じられたイン トラネットであるが、電子ネットワークの利用は意外と早くから始まっていたようだ。強力な鎖国政策を維持してきた金正日政権なりに、世界のデジタル化、電 子化の潮流に乗り遅れることに対する危機感があったからだと思われる。

ちなみに、石丸の知人の在日朝鮮総連の貿易商は、平壌に住む帰国者の親戚が営む貿易会社と、遅くとも〇六年には電子メールでやり取りしていた。公安機関や貿易など国際業務の必要な機関は、限定的にインターネットとの接続を許されているのだろう。

官営メディアで紹介された咸鏡北道会寧(フェリョン)市内のキム・ギソン第一中学校でのパソコン授業の様子。心なしか生徒の表情が硬い。(画報「灯台」336号[2009年12月発行]より)

官営メディアで紹介された咸鏡北道会寧(フェリョン)市内のキム・ギソン第一中学校でのパソコン授業の様子。心なしか生徒の表情が硬い。(画報「灯台」336号[2009年12月発行]より)

OSはウィンドウズ、本体は中国製

北朝鮮は独自のOS「赤い星」を開発しているが、国内で使用されているのは、もっぱら米マイクロソフト社のウィンドウズである。一般の役所や機関・ 組織でも文書作成の際にはウィンドウズと文書作成ソフト「オフィス」が使用されていると、内部記者たちは共通して証言する。編集部が入手した携帯電話の購 入申請書の書式は「ワード」で作られていたし、やはり内部記者が入手したある地方病院の職員データベースは「アクセス」で構築されていた。

国内で売られているパソコンは中国から輸入されたものだ。どうやって個人が購入するのだろうか。チェ・ギョンオク氏は次のように説明する。
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