◆営農資材の不足は深刻

今秋の収穫に暗い影を落としているのは天災だけではない。飢饉や相次ぐ天災にも関わらず、営農資材がまともに供給されなかったのだ。農村幹部のリム氏は次のように述べた。
「私の所属する協同農場には、今年8月まで政府が供給すべき肥料が一切届いていません。従来ならば足りない分は作業班長などがお金を出し合って買うのです が、今年はお金が足りなくて買えませんでした。9月以降に肥料が入ってくるという噂がありますが、今年の収穫には役立ちませんよ」。

別の証言からは、政府は表向きだけでも取り繕うため、やっきになっている様子が確認された。農村事情に詳しい前出の党中堅幹部のキム氏はこう語る。
「黄海南道では、農場の自力ではどうにもできないからと、国から種子や肥料など、一定量の営農資材の配給があった地域もありました。だが、内幕を詳しく聞 くと、国にもお金が無いから、強制的に保衛部員(情報機関)などの治安機関の職員に、一人当たり100ドルから200ドルの外貨を強制的に出させて営農資 材を配ったということでした。でも保衛部員は、国に差し出したお金の分だけ、間違いなく秋の収穫時に農民たちから搾り取るでしょう」。
権力機関に負担を求めるこうした措置では、実際の問題を解決することにはならず、しわ寄せは結局民衆に向かうだけだと、キム氏は説明する。

(参考写真)黄海北道の農家の玄関先。壁の補修もままならなず傷みが激しい。窓には風除けのビニールが張られている。2007年10月 李準(リ・ジュン)撮影

(参考写真)黄海北道の農家の玄関先。壁の補修もままならなず傷みが激しい。窓には風除けのビニールが張られている。2007年10月 李準(リ・ジュン)撮影

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