◆クアラルンプールの歴史博物館にある日本刀と日章旗

マレーシアの首都クアラルンプールでは、歴史博物館を見学中、第2次世界大戦の展示コーナーで、日本軍が残していった軍刀と武運長久の寄せ書きのある日章旗が陳列されているのに目がとまった。軍刀の刃が底光りを放っていた。

ちょうどそのとき、老年の華人(華僑)の参観者グループがやって来て、軍刀と日章旗を指さしながら話しはじめた。みんな厳しい表情をしている。「東洋鬼」(トンヤンクエイ)という言葉がくりかえし聞こえてきた。

「東洋鬼」とは、アジア・太平洋戦争で残虐行為をはたらいた日本兵すなわち日本人を指す中国語の言葉だ。戦争中、マレーシアでも、シンガポールでも、日本軍は治安維持を名目に多くの華人を虐殺した。

私は刺すような視線を感じた。日本人旅行者と見なされていたのだろう。私はその場に立ちすくんでいた。脂汗がにじむ思いだった。しかし、誰も話しかけてくることはなく、一団は立ち去った。

もう二度と、「キャプテン・ヨシダ」や「東洋鬼」といった言葉とともに語られるような記憶を、他国の人びとの心に残したくない。
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