◆日本の司法の独立性が侵害された

その結果、何が起きているでしょうか。

日本では、今日にいたるまで、米軍のフリーハンドの特権が認められ、米軍の軍事活動が事実上の治外法権の状態におかれています。

砂川裁判最高裁判決が、米軍に対して日本の指揮権・管理権が及ばないと判断したこと、つまり米軍基地や米軍の軍事活動を日本政府が規制できないと判断したことが、権威ある最高裁の判例となって、大きな影響力を持ってしまったからです。

そのため、たとえば米軍機が騒音公害となる爆音を放ちながら危険な低空飛行を続けても、日本政府はそれを止められません。

基地周辺の住民が、せめて夜間だけでも飛行をやめてほしいと、飛行差し止め訴訟を起こしても、裁判所は「日本政府には、米軍の飛行場の管理運営の権限を制約し、その活動を制限することはできない」として、差し止め請求を却下したり、棄却したりしつづけています。

つまり、米軍基地と米軍の軍事活動に日本の行政権も司法権も及ばない実態、事実上の治外法権がもたらされているのです。

騒音公害や危険な低空飛行など米軍による人権侵害をやめさせ、人権侵害を受けている住民を救済すべき司法の役割と責任を、裁判所が放棄してしまっているのです。

このような状態をもたらした砂川裁判最高裁判決は、実はアメリカ政府による干渉を受け、それに呼応した外務省高官や田中最高裁長官らによる、司法の独立性の侵害の産物でした。

2014年6月17日、砂川事件元被告の土屋源太郎氏、武藤軍一郎氏、椎野徳蔵氏、元被告の故坂田茂氏の長女の坂田和子氏は、砂川裁判の再審請求を東京地裁に対しておこないました。

司法の独立性が侵され、黒い霧におおわれた砂川裁判最高裁の法廷は、憲法が定めた公平
な裁判所ではなく、その最高裁判決に拘束された東京地裁での差し戻し審も同じように公
平な裁判所ではなかったからです。

つまり、公平な裁判所ではなかった東京地裁での差し戻し審による有罪判決は誤判(誤審)
であり、それを失効させ、そもそも正当性を持たない砂川裁判最高裁判決をも失効させるための再審請求なのです。

司法の独立性を回復させるためにも、東京地裁は再審請求に応じ、公判を開いて、砂川裁判最高裁判決の背後にあった、アメリカ政府の干渉とそれに協力した外務省や検察や田中最高裁長官らの動きを徹底的に明らかにすべきです。
~つづく~
【吉田敏浩】

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書籍 『検証・法治国家崩壊 ~砂川裁判と日米密約交渉』 (吉田敏浩)