201508_MAP_MOSUL01X180B昨年6月、武装組織イスラム国(IS)は、イラク第2の都市モスルを制圧。独自に解釈した「イスラム法」を布告し、住民支配を固めている。ISはスパイを 警戒し、地域外との電話網を遮断しているが、今回、極秘の回線を使い、IS支配下の住民との直接インタビューをおこなうことができた。市内に暮らすアブ・ ムスタファさん(仮名・35)は現在、ISに高い税金を払い、タバコの販売をしている。外部との通話が発覚すれば、スパイとして処刑されるため、身元が特 定される情報は一部ぼかしてある。【アルビル・玉本英子】

◆どのような仕事をして生計を立てているのですか?
モスル市内でタバコを販売しています。ISは表面上、タバコや酒の販売を禁止しています。でも実際には売ることは出来ます。ただ公には商売できないので、 店を構えずに、連絡を受けてから直接手渡しで売ります。彼らは販売を黙認する代わりに高い税金を要求します。タバコ500箱を250万イラクディ ナール(約25万円)で仕入れていますが、ISは税金として100万イラクディナールを徴収します。そのため、以前なら1箱75円~100円程度だったマ イアミという銘柄が、現在8000イラクディナール(約800円)もします。

客の多くはIS関係者です。彼らは市民に「我々に従え、従わないと殺す」などと脅しますが、その実態は宗教とは程遠い人たちです。タバコは、バグ ダッドなどで仕入れたものを、一度シリアへ送り、シリアのIS支配地域を経由してイラクのモスルへ運んでいます。食糧などもそのような形でモスルへ運ばれ ています。

モスルはイラク第2の都市。ISは昨年6月に大攻勢をかけ、イラク軍は敗走し、町は陥落した。以前は近郊も含めて200万前後の人口があったが、IS侵攻で住民の脱出があいついだ。(ニナワ県モスル・IS映像)

モスルはイラク第2の都市。ISは昨年6月に大攻勢をかけ、イラク軍は敗走し、町は陥落した。以前は近郊も含めて200万前後の人口があったが、IS侵攻で住民の脱出があいついだ。(ニナワ県モスル・IS映像)

 

◆市民生活はどういう状態ですか?
モスルでもISに支配されている、ないにかかわらず、公務員は数か月に一度、イラク政府から給料をもらうことができました。しかし今は、もらえなくなりま した。多くの市民は収入がなく、生活ができない状況です。店に物が並んでいても買えないのです。日中は35度を超える暑さですが、電気は1日に2時間だけ です。水も出ないので、市民は地区にある水汲み場へ行きます。学校も閉鎖され、私の子どもたちは小学校へ行っていません。女性は外に出るときは体をすっぽ り隠す、黒いヒジャブを着なければなりません。そのため通りで見かける女性の姿はめっきり減りました。私は半年以上、自分の妻以外の女性の顔を見たことは ありません。恐怖支配のうえに、経済がまわらなくなったことで、人びとの生活は限界です。

モスル市内はIS戦闘員が支配する。外国人戦闘員も多い。(ニナワ県モスル・IS映像)

モスル市内はIS戦闘員が支配する。外国人戦闘員も多い。(ニナワ県モスル・IS映像)

写真はヒスバと呼ばれる宗教警察。犯罪捜査、スパイ摘発、飲酒、薬物の検挙を行う。このほか礼拝時間に商店を閉めさせるなど「イスラム風紀の徹底」を指導する機関でもある。(ニナワ県モスル・IS映像)

写真はヒスバと呼ばれる宗教警察。犯罪捜査、スパイ摘発、飲酒、薬物の検挙を行う。このほか礼拝時間に商店を閉めさせるなど「イスラム風紀の徹底」を指導する機関でもある。(ニナワ県モスル・IS映像)

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タバコはイスラムの教えに反するとして、摘発しては焼却する。(ニナワ県モスル・IS映像)

タバコはイスラムの教えに反するとして、摘発しては焼却する。(ニナワ県モスル・IS映像)

モスル市内のレストラン街は電気がついているが、生活の厳しい住民には外食もままならなくなった。こうしたところに通うのは高待遇の給料をもらう戦闘員か、生活の余裕のある家庭という。(ニナワ県モスル・IS映像)

モスル市内のレストラン街は電気がついているが、生活の厳しい住民には外食もままならなくなった。こうしたところに通うのは高待遇の給料をもらう戦闘員か、生活の余裕のある家庭という。(ニナワ県モスル・IS映像)

女児以外の女性はすべて外出時は黒いヒジャブで全身を覆わなくてはならなくなった。ISが統治を始めてからは、外に出る女性も減ったという。写真はISがモスルに設置したヒジャブの着用規定項目。「肌が透けていてはいけない」「体のラインがわかるものは不可」「香水、ブランド品は不可」などとある。(ニナワ県モスル・IS映像)

女児以外の女性はすべて外出時は黒いヒジャブで全身を覆わなくてはならなくなった。ISが統治を始めてからは、外に出る女性も減ったという。写真はISがモスルに設置したヒジャブの着用規定項目。「肌が透けていてはいけない」「体のラインがわかるものは不可」「香水、ブランド品は不可」などとある。(ニナワ県モスル・IS映像)

貧困家庭にはイスラム法に基づくザカート(喜捨)とよばれる生活扶助システムがある。食用油、小麦粉、タマゴ、現金が定期的に配布される。だがイラクの場合は、フセイン政権時代から続く配給制度があり、IS支配でそれがザカートに取って代わったという見方もある。(ニナワ県モスル・IS映像)

貧困家庭にはイスラム法に基づくザカート(喜捨)とよばれる生活扶助システムがある。食用油、小麦粉、タマゴ、現金が定期的に配布される。だがイラクの場合は、フセイン政権時代から続く配給制度があり、IS支配でそれがザカートに取って代わったという見方もある。(ニナワ県モスル・IS映像)

 

〔イラク現地報告〕イスラム国(IS)支配下のモスル住民に聞く(2) >>
<玉本英子のシリア報告><玉本英子のイラク報告>