「『政治と金』を調べ伝える新しい試み」について3人が発表した第1部に続き、第2部では、パナマ文書報道に参加したジャーナリストの経験も共有しながら、現場で活躍する記者や研究者が新しい調査報道について議論した。(アイ・アジア編集部)

登壇したのは、来年アイ・アジアの編集長に就任が決まっているジャーナリストの立岩陽一郎さん、新聞記者の高田昌幸さん、同志社大学大学院教授の小黒純さん、アジアプレス所属ジャーナリストの石丸次郎さん。この他、イタリアの調査報道NPO「調査報道プロジェクト・イタリア(IRPI)」に所属し日本の国内事情にも詳しいジャーナリスト、アレッシア・チェラントラさんが、インターネットを使って議論に参加した。

冒頭、パナマ文書報道のプロジェクトに、これがまだプロメテウスと呼ばれていた段階から参加したチェラントラさんが、各国のジャーナリストが普段は競合相手である他メディアの同業者と協働した点について発言。共に参加していた共同通信と朝日新聞の記事の内容が異なっていたことに触れつつ、「調査には力を合わせたが、記事が出る時には独自の記事として、アングルは自分の好きなように決められた。プロジェクト参加の意義は情報のシェア。コラボレーションしてお互いに役立った」と述べた。

イタリアからビデオ参加したアレッシア・チェラントラさん(右)と、質問を投げかける石丸次郎さん

 

また、パナマ文書報道のイタリアでの反応について石丸さんが質問すると、「政治家や著名人の名前が出てきて話題になったが、すぐに忘れられた。メディアと世論が興味を持てなかった」と答えた。また、「日本ではイタリアと異なり当初のインパクトはそれほど大きくはなかったが、今でも関心が続いている。なぜか」と日本の登壇者に意見を求めた。

これに対し、立岩さんが「日本では大物政治家などの名前がこれまで出ていないが、これから出てくるのではという期待がある。加えてパナマ文書が組織や国境を離れてジャーナリストが連携したという点に、ジャーナリズムの関心が向いている」と応答。日本のメディアは、伝統的に発表予定となっている内容を他社に先駆けて報じることが評価されてきたと指摘した上で、「パナマ文書は絶対に出てこないものを出す。これが世界的に評価されたことで、日本のメディアにとって大きなインパクトになった」と述べた。

小黒さんは、日本のジャーナリズム界で栄誉とされる新聞協会賞にNHKの「天皇『生前退位』の意向」報道が選ばれたことを挙げ、同じスクープでもパナマ文書報道はこれと大きく異なることを指摘した。高田さんは「日本では他と違う、他より速いという物差しだけが大手を振ってきた」として、「スクープの基準、スタンダードがない」と批判した。

立岩さんはまた、「日本の大手メディアは他社の特ダネが追えなかったら書かない。時には抹殺するケースもある」と指摘し、「パキスタンのメディアは、ムシャラフの不正を書こうとして圧力がかかった時、『我々が書かなくても他国のメディアは書きますよ』と言った。こういう他のメディアとの共闘が出来るのか、その土壌が試されている」と述べた。
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