小黒純さん

 

これらを受け、終盤は今後のジャーナリズムの進むべき方向が議論された。立岩さんは「ジャーナリストの思考を変えていかなければならない。従来フットワークの軽さが絶対条件とされてきたが、調査報道は真逆で、記者の素養とされてきた人に会って話を聞いてくるということではなく、ある種の使命感を持って資料を読み込めるかという資質が必要」と話した。

小黒さんは「パナマ文書報道では、かつてのウォーターゲート事件の調査報道と異なり、ネタ元と記者は接触していない、もしくは、接触していないことになっている」と補足。高田さんは、ジャーナリストが取材相手の懐に飛び込んだ後に、その相手に不利益な事情でも確実に報じる姿勢と、多様な取材者が調査報道に関わることの重要性を訴えた。石丸さんは調査報道には強い証拠力が必要であると強調した。

チェラントラさんは、日本のジャーナリズムの問題点を指摘する登壇者の発言に同意しつつ、「パナマ文書をきっかけに変わっていくチャンスはある」とコメント。「異なるメディアが立場の違いを越えて協力し、一つの情報を共有するような仕組みを日本のメディアが活用していけば、日本のジャーナリズムのレベルも上がると思う」と述べた。

チェラントラさんの発言に耳を傾ける登壇者ら

 

最後に高田さんは「『今が日本のジャーナリズムが変わる時』と言われて30年たった気がする。議論だけでは進まない」と話し、「具体的にネタを探してそれを基に新しい取り組みを実行しなければ、再び30年経つ」と警鐘を鳴らした。立岩さんは米国民の調査報道への意識の高さを紹介しながら、日本のジャーナリズムの改革には社会全体の意識が変わることも必要だとの認識を示した。小黒さんは、研究・教育機関である大学が果たす役割にも触れつつ、メディアに対し「どういう報道基準を持っているのかなど、オープンな姿勢を示していくことが大事」と指摘した。(了)

写真=鹿嶋理英子

当日の模様は動画(中島貫撮影)とツイッターまとめで公開中。

【関連記事】
乗っ取られてドキュメンタリーになった映画「太陽の下で~真実の北朝鮮~」の本当の怖さ 石丸次郎
<さよなら橋下徹>「橋下維新」の言論干渉を振り返る 石丸次郎
島尻沖縄担当大臣を刑事告発 政治資金規正法と公選法違反で 1050万円の借入金「消える」カレンダー配布も実態と矛盾

★新着記事