朝鮮学校への補助金停止取消訴訟を全面的に退けた大阪地裁判決に対し、抗議集会で声をあげるオモニ(母親)たち(撮影・矢野宏)

朝鮮学校への補助金を打ち切った大阪府と大阪市に対し、府内で10校を運営する学校法人「大阪朝鮮学園」が決定の取り消しを求めた裁判で、請求を全面的に退けた大阪地裁判決に抗議する緊急集会が2月9日、大阪市中央区のエルおおさかで開かれた。朝鮮学校に子どもたちを通わせているオモニ(母親)たちをはじめ、日本人の支援者ら160人が控訴審での勝利を目指して闘うことを誓い合った。(矢野 宏/新聞うずみ火)

◆「教育を受ける権利を侵害」
1月26日の敗訴を受け、この問題を弁護団任せにするのではなく自分たちの運動としてもとらえようと、「大阪府オモニ会」が呼びかけた。

補助金支給に際し、橋下徹知事(当時)が2010年3月、「朝鮮総連と一線を画すこと」「北朝鮮指導者の肖像画撤去」など4要件を提示した。学園は、1974年度から大阪府の助成を受けるようになり、91年度からは、「私立外国人学校振興補助金」の交付を毎年受けてきた。府と市からの補助金は約1億円。2010年度は要件を満たした初級学校と中級学校には支給されたが、肖像画を外さなかった大阪朝鮮高級学校には交付されなかった。
さらに12年3月、初・中級学校の児童・生徒たちが訪朝したとして、府は11年度からの補助金を止め、市も同調した。

学園側は12年9月、「民族教育への不当な政治介入で、憲法が保障した教育を受ける権利を侵害している」などと大阪地裁に提訴。4年4カ月にわたる審理の末、山田明裁判長は4要件について「府の裁量の範囲内」と認定。「学園が要件を満たしておらず、不支給はやむを得ない」と結論付けた。

◆守ってきた民族教育、受け継ぎたい
緊急集会では、弁護団の普門大輔弁護士が判決内容を説明し、「裁判の本質は子どもの学ぶ権利であり、民族教育を受ける権利にもかかわらず、4要件をたてにして国や自治体が朝鮮学校に介入しようとしている」と訴えた。

「城北ハッキョを支える会」代表の大村淳さんは「最初から結論ありきの差別判決。一審の敗訴を吹き飛ばすためにも、学校のことを知ってもらうこと。偏見を持った人が周りにいれば話しかけ、理解してもらうよう努めたい」と話した。

府オモニ会代表の玄順愛(ヒョン・スネ)さんは4人の子どもたちを朝鮮学校に通わせており、授業料などで毎月10万円以上かかる。それでも朝鮮学校へ通わせるのは、「朝鮮人としてのアイデンティティを持ってほしいから」。自身も朝鮮学校の卒業生であり、社会に出てからも「学校で知り合った友達は一番の宝」だと語る。

「私が高校の時、通学定期の学割もなく、高校総体などにも出場できず、日本の大学の受験資格も認められていませんでした。それらがようやく認められて20年以上たちますが、再びこんな差別を受けることになるとは思いませんでした」と振り返ったあと、力強くこう語った。

「私たちも府や市に税金を払っているのに、人間扱いされていない。チマチョゴリの制服で登下校できない子どもたちのためにも、1世や2世たちが守ってきた民族教育を私たちの代でつぶすわけにはいきません」

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