◆中国生産品のチェック不備か
中国製造の珪藻土バスマットやコースターからアスベスト(石綿)を検出する事例が相次ぐ。珪藻土製品からなぜ石綿の検出が続出するのか。独自の分析データや証言もふまえて迫る。(井部正之)

ニトリ店舗内に並ぶ「安全」とされる珪藻土製品

◆「お手入れ」で子や孫に吸わせる危険!?

「過去に見たことのない数です」

こう厚生労働省化学物質対策課の担当者が驚がくしたのが家具大手・ニトリホールディングスの珪藻土(けいそうど)製品における石綿検出だ。回収対象は355万個超に上る。

珪藻土製品からの石綿検出が止まらない。同社やホームセンター大手・カインズなどが販売していた珪藻土製のバスマットやコースターなどから労働安全衛生法(安衛法)の基準を超える石綿を検出し、自主回収の発表が相次いでいる。

石綿は髪の毛の5000分の1というきわめて細い繊維状の鉱物。熱や摩擦、酸、アルカリに強く、耐久性も高いため、過去に約1000万トン輸入され、工業製品や建材などに使用された。ところが、発がん性がきわめて高く、吸ってから数十年後に中皮腫などを発症する場合があることが明らかになり、「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになった。

日本では2006年9月に重量の0.1%を超えて含まれる製品の使用や輸入、販売などを禁止。しかし、過去の石綿使用により中皮腫だけでも毎年1500人超が亡くなっている。すでに肺がんなどを含めると年間2万人超が死亡していると推計されている。

そんな危険な発がん物質が吸水性の高さと手入れの容易さで大人気となっている珪藻土バスマットやコースターに含まれていた。しかも珪藻土製品では吸水性が悪くなったり汚れた場合、紙やすりで表面を削る手入れが推奨されている。ニトリのバスマットは「お手入れ用」として紙やすりが付属していたほどだ。

手入れで表面を削ることで石綿が飛散し、それを吸ってしまうおそれがある。細かな粉じんとなった目に見えない石綿は再飛散のおそれもある。本来なら新型コロナ対策よりもさらに高性能な防じんマスクの着用などが義務づけられている作業である。そんな危険な作業を子や孫が手伝ったり、そのそばに居たりすれば、知らない間に石綿を吸って将来の発がんリスクを抱え込む新たな原因となる可能性があるのだ。

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