◆日本でも石綿含む端材投入

これに対し、ニトリやカインズ、不二貿易はいずれも中国の会社で製造された輸入品だ。石綿禁止前の“在庫処理”とは事情が異なる。

原因は各社とも「調査中」ではっきりしないが、そもそも珪藻土は珪藻(けいそう)という「藻」が化石となってたい積したもの。一方、石綿は蛇紋石や角閃石のマグマが特殊な条件で水に冷やされてできたものだ。成り立ちの違いから産出した珪藻土に石綿が入り込むことは考えられない。

石綿検出が相次ぐ事情を探る上で、参考になるのは堀木工所の事例だ。

同社では禁止前に購入した建材を珪藻土バスマットに転用していた。なぜそんなことができたのかといえば、珪藻土製品と建材はよく似たものだからである。

珪藻土バスマットやコースターなどの製造は代表的なものでは、珪藻土に生石灰、紙パルプ(植物繊維)などを混ぜて、板状にして圧力釜で反応後、乾燥との工程をたどる。これは建材「けい酸カルシウム板」の製造方法そのものだ。しかも建材の製造設備を転用できる。実際に日本でもかつて建材メーカーだったところが珪藻土製品の生産に乗り出している。

だからといって石綿が含まれる理由にはならない。しかし、中国では石綿使用が禁止されていない。そのうえ、ふだんは石綿を含む建材に使っている製造設備が転用できるとなればどうだろうか。

格好の事例がある。石綿使用を推進してきた日本石綿協会の後継団体・JATI協会は、かつて石綿を含有しない建材のリストをウェブサイト上で公表していたが、石綿含有が確認される事例が相次ぎ、2016年3月掲載中止に追い込まれた。

2018年11月の環境省・石綿飛散防止小委員会で問われた同協会関係者は「原料として石綿を直接入れてはおりません。ただ、(石綿含有と含有なしの製品を)併産していますので、まず製造ラインの問題と、あと端材ですね、端材を入れたりしていますので、1%以下のものがかなりあると思います。無石綿と表示があってもわからないというものが結構あります」と禁止前のずさんな生産管理の実態を明かした。

15年前まで日本でも建材メーカーの認識はこの程度でしかなかった。さすがに現在は違うはずだが、今回の珪藻土製品の製造メーカーがある中国も含め、いまだに石綿の使用を禁止していない国ではかつての日本と同じように無石綿製品に多少混ざっても「むしろ強度が上がる」などと考えられていてもおかしくない。

実際に石綿使用国からの輸入品に石綿が含まれる事例は毎年とまではいかないが、数年に一度は起きている。そして中国はそうした輸入元の1つとしてよく知られる。

自主回収を発表した3社は筆者の取材に対し、「品質管理をしてきた」と強調する。定期的な工場監査や独自基準の設定、吸水・乾燥速度の独自検査など各社で詳細は異なるが、何らかの取り組みをしてきたのは間違いないようだ。

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