◆知らぬ間に石綿混入の製品が

ところが石綿対策はほとんどなかった。各社で「日本の法令を遵守する」などの一般的な契約規定はあったようだが、基準を明確に示していたかどうかすらはっきりとした説明がない。実質的に製造メーカーに丸投げといってよい状態だった。

ニトリの武田政則社長は昨年末の謝罪会見で「工場に対して、(石綿の)検査依頼が明確に行われていなかった」と認めた。カインズも同様だ。唯一、不二貿易は「工場から検査結果を取得し、含有無しという結果を確認済み」と回答したが、分析頻度や基準など詳細は不明だ。

しかも3社とも原材料や製品の石綿について独自の検査を一度たりともしていなかった。石綿の混入を防止するための品質管理はほぼ存在していなかったといわざるを得ない。今回のような問題が起こるのは当然といえよう。

原因究明を早々に切り上げてうやむやにするような事例がしばしばあるが、厚労省は「ろくに調べもせずによくわかりませんでしたとなったら、改めて原因調査を求めることになる」と釘を刺す。

海外生産で調査も容易ではないだろうが、徹底した原因究明が必要だ。それなしには、再発防止に不安が残る。

今回の珪藻土製品からの石綿検出に関連して厚労省がもっとも恐れているのは輸入建材も同じ状況ではないかということだ。

輸入建材は増え続けているが、きちんと検査されているのか疑問である。実際にオーストラリアでは中国からの輸入建材に石綿が含まれる事例が相次ぎ、社会問題化したほどだ。日本では禁止後の2006年9月以降に建てられた建築物の石綿調査を免除しており、同省化学物質対策課は「建材から検出したらややこしい話になる」とため息をつく。

同省は「輸入品の石綿含有のチェックが十分にできていないのではないかと改めて認識した」(同課)として独自に輸入品を分析調査する方針。また税関など関連省庁と水際対策の検討を始めるというが、どこまで踏み込んだ対策がされるのか。

オーストラリアでは輸入手続きで分析結果の提出を義務づけているほか、抜き打ち検査もある。ところが日本ではそうした取り組みはなく、石綿含有と明記されていてもそのまま税関を通ってしまうなど、水際対策が機能していない。

海外では子ども向けの製品から石綿を検出される事例が相次いでいる。たとえばイギリスでは鑑識セットの玩具で指紋採取用の粉から検出し、オーストラリアではクレヨンに含まれていた。アメリカでは幼児向けのコスメキット。いずれも中国の工場で製造されたもので、タルク(滑石)に石綿が混ざっていた。

アメリカではベビーパウダーへの石綿混入で健康被害を受けたとして、約2万件の損害賠償請求訴訟が起きている。日本でも石綿が混入したベビーパウダーを業務で使って中皮腫を発症し労災認定を受けている事例がある。今回のような事例が続けば、石綿混入の日用品による一般住民の健康被害すら出かねない。

※初出:2021年1月19日週刊朝日オンライン掲載の拙稿に加筆修正

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