国産のペニシリン。品薄でニセ薬が大量に出回っているという。2015年4月北朝鮮国内で撮影アジアプレス

 

新型コロナウイルス対策で貿易を中断したことで深刻化している医薬品不足に対処するため、北朝鮮当局が貿易商社に対し中国からの医薬品と医療用品の緊急輸入を指示していたことが分かった。北部の両江道(リャンガンド)の取材協力者が4月9日に伝えてきた。(カン・ジウォン/石丸次郎

◆ロシア外交官が医薬品不足を暴露

北朝鮮の医薬品不足は極めて深刻だ。治療を受けられず死亡者が多数発生する医療崩壊状態にある。最大の原因は、2020年2月から新型コロナウイルスの流入遮断を理由に貿易を厳しく制限した結果、中国製の医薬品がほぼ枯渇してしまったためである。国際機関などの支援品の受け入れも中断している。

アジアプレスの取材協力者たちからは、昨年春に早くも地方都市から医薬品の品薄と価格高騰が伝えられ、秋になると、病院、薬局でも医薬品と医療用品が枯渇、病気や怪我の治療ができなくなっていた。

2月25日、平壌駐在のロシア大使館員とその家族8人が、手押しトロッコで出国する様子をロシア外務省が公開して注目を集めた。ロシア大使館は4月1日、フェイスブックに「薬品を含めた必需品の深刻な不足」を訴えた。チェコ大使館員も「アジア自由放送」(RFA)の取材に深刻な物資不足を認めている。

外交官ですら医薬品をまともに入手できないということは、一般の平壌市民や地方住民がさらに深刻な状態にあることは容易に推測できる。アジアプレスでは、2021年初めから北朝鮮各地の取材協力者と医薬品不足の影響を調べた。

<北朝鮮内部>薬が消えた…医薬品枯渇で「医療崩壊」状態 コロナ封鎖で輸入止まる 隔離中に死亡多発

◆各地から死亡続出の報告が

調査地は平安北道(ピョンアンプクド)、両江道、咸鏡北道(ハムギョンプクド)だ。いずれも中国と隣接する地域で、中国産品の在庫が他地域より多く残っている場所だ。調査報告の内容はほとんど同じだった。概略を記そう。

「病院、薬局に行っても薬の在庫がなく売っていない。個人の薬商売を厳禁して取り締まっているので、闇の販売価格は7~10倍以上になったが、買い求めても入手できないことが多い。錠剤は一粒ずつばら売りしている」

「体温計、風邪薬、心臓薬が枯渇状態。中国製の体温計は2元だったのが、今は50元出しても買えない。心臓病がある人が、動悸が激しくなった時に飲む薬がなくなって、年寄りがたくさん死んだ。薬を安定して入手できるのは大金持ちと幹部だけだ」 ※1中国元は約16.5円

「抗生剤がなくて困っている大勢いる。現金収入が減って満足に食べられず弱ったところに風邪をひいて死んだ人が多い。結核患者も薬がなくなって大勢死んだ。」

「中国製の使い捨ての注射器や点滴用品がなくなって、病院では煮沸して再利用していたが、中国製は皆プラステチックなので変形してしまうためぬるま湯で洗って使っている。薬が消えてしまい、病気になったらどうしようと不安が広がっている」