(参考写真)北朝鮮で最も貧しいのは農村。牛を引く農村女性。2008年10月に平壌郊外の農村で撮影チャン・ジョンギル(アジアプレス)

 

北朝鮮当局が、「小土地」と呼ばれる山間地の個人耕作地の全廃を命じ、農民の間に不安が広がっている。北部の複数地域で取材協力者が調査した。(カン・ジウォン/石丸次郎)

北朝鮮では協同農場での集団農業が原則だが、経済危機が深刻化した1990年頃から農民や都市郊外の住民が山の傾斜地を伐採して勝手に開墾した「小土地」が全国に広がった。

「小土地」の生産は、自家消費や販売収入によって耕作者にとって大きな恵みとなると一方、乱伐で山々が保水力を失い、洪水が頻発する原因になった。金正恩政権は取り締まりと植樹を進めてきたが、根絶できずにいた。当局者が賄賂を受け取って黙認したり、「小土地」耕作者に使用料を支払わせて、組織の収入に当ててきたからだ。

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◆個人農は非社会主義だ

「傾斜45度以上の斜面は一切の開墾、種植えを禁じて植林する。傾斜がそれ以下の個人の畑は、協同農場に移管させる」

咸鏡北道(ハムギョンプクド)、両江道(リャンガンド)で調査した協力者が伝えてきた「小土地」禁止措置の概要だ。

「山の入口に山林監督隊が警戒哨所(小屋)まで建てて、山に入ろうとする人を取り締まっている。警察に連れて行って罰金を科すこともある」
と両江道の協力者は言う。

重要なのは、今回の「小土地」禁止措置の主目的が、山林保護よりも個人の経済活動の統制にあることだ。つまり「個人農」を非社会主義的現象と位置づけ、それと闘争せよという政策の一環なのである。咸鏡北道の協力者は次のように言う。

「当局は『農場の仕事よりも個人の畑をしっかりやればいいという思想は間違っている』という講演会までしている。要するに個人の農業は、庭以外では一切禁止にするというのだ」

(参考写真)荒廃した北朝鮮の山。山頂まで木が切られて一面畑=「小土地」になっている。2014年5月中旬に恵山市を中国側から撮影(アジアブレス)

◆「小土地」取り上げに絶望する人も

2019年から2020年にかけて、国の指示で農場周辺の「小土地」の面積を測る「検地」が行われた。行政機関の農村経営委員会では、そのうちの一部を耕地面積の増加分として国に報告して農場に帰属させたが、多くはそのまま個人に耕作させて、使用料を協同農場に納めさせていた。

しかし、個人耕作を一切許さないというのが、今年の金正恩政権の態度だ。すべての「小土地」を協同農場に帰属させ、それを「山林利用班」が管理するようにした。長く「小土地」を耕してきた農民にすれば、国家による農地取り上げである。当然、反発が出る。「『小土地』が無くなったら飢え死にだ」と絶望の声をあげる人もいるという。だが幹部らの態度は強硬だ。

「『小土地』を耕したかったらやればいい。しかし、秋の収穫は全て没収するから、そう思え」。不満を露わにする農民を、幹部らはこのように脅していると協力者は伝える。