(参考写真)少女のコチェビが露天市場で食べ物をじっと見つめている。手には食べ物が少し入ったビニール袋が握られている。2013年3月平安南道平城市にて撮影アジアプレス

 

北朝鮮の都市部で「コチェビ」と呼ばれる浮浪者が増えていることが分かった。北部地域に住む複数の取材協力者が4月に入り調査・報告してきた。(カン・ジウォン

「コチェビ」が増えているのは食糧不足のためではない。現金収入が激減して生活が維持できなくなった人が増えているのだ。

金正恩政権は新型コロナウイルスの流入遮断のため、2020年1月末から中国国境を封鎖、さらに国内の移動を強く制限したため生産が大きく停滞し、人とモノの流通が減った。結果、多くの人が商売不振と失業で現金収入を失ってしまったのだ。以下は、両江道(リャンガンド)に住む協力者の報告だ。

◆市場で年寄り女児も物乞い

子供から年寄りまで、市場や駅前で物乞いをする『コチェビ』が増えた。特に年寄りが悲惨だ。食べられなくて弱ってしまい、市場で寝込んでそのまま死んでしまう人を見た。

多いのは子供たちだ。両親が生活苦で家売って出て行ったり、養育を放棄してしまったケースだ。10代半ばの子供たちは市場でひったくりやスリを働く子もいる。当局では、親を探し出して扶養させようとしているが、なかなか探し出せないし、探せても余裕がなく、当局としても方法がない有り様だ

気がかりなのは女児の『コチェビ』だ。「食べさせてやるから」と連れて行かれ性的虐待を受ける子供が少なくない。だが女児を保護する施策は何もないのが現実だという。

入手した8月発行の労働党の内部文書(撮影アジアプレス)

 

◆政府は収容命じるも効果は薄く

協力者は市場で見かけた二人組の「コチェビ」から話を聞いた。

聞くと12歳と9歳の兄弟だった。兄の方は靴がなくて足に布を巻いていた。そこから水のようなもの滴り落ちていた。どうしたの? と聞くと、冬の間に凍傷になってしまったと言っていた

最近目に付くのは浮浪生活している20-30代の若者が出現していることだ。
軍隊を除隊して自宅に戻ったものの収入がなかったり、青年組織の『突撃隊』(建設土木作業専門の組織)から逃げ出した者が市場をうろつき、工事現場や工場のボイラー室などに入り込んで寝泊まりしている

当局も「コチェビ」の増加を無視できなくなっている。アジアプレスが入手した昨年8月発行の労働党の内部文書では、「最近放浪者たちが増えている動向」という見出しを立て、対策について次のように記している。
「人民委員会(地方政府)と安全機関(警察などの公安組織)で、自己の地域で彷徨っている放浪者たちを漏れなく捉え(把握し)、救護所に送って生活を安着させ、非常防疫事業に支障を与える現象が現れないよう掌握統制を強化するようにします」※()内は筆者の補足。
最近の当局の動きはどうか? 協力者は次のように説明する。

恵山市では、既存の孤児院や空いている旅館に収容するため、毎日市場などで子供たちを捕まえている。けれども、まともな食事が出ないためすぐに逃げして、また市場で物乞いや盗みをしている