◆農業生産は不振か

撮影者の超望遠カメラは、畑で作業をする人たちの姿も捉えていた。草取りをしているようだったという。ただ、いかにも軽装で協同農場員ではなさそうな若い女性の姿もある。

写真10

鴨緑江沿いに整然と張られた有刺鉄線。住民たちは「檻」の中に閉じ込められてしまい、もう中国への越境は不可能ではないか。

 

写真11

軽装の女性2人組は農場員ではなく近隣住人だと思われる。傾斜地の小さな畑の草取りをしていた。

 

写真12

植樹された苗木の間の草取りに勤しむ3人組。やはり農民ではなく近隣住民のようだ。傾斜地の下は鴨緑江で、接近を見張る照明が設置されている(赤丸)。

 

写真13

上の写真の3人組のアップ。おそらく植えてあるのは大豆。個人の隠し畑の収穫が住民たちの生活の足しになる。

 

写真14

こちらは協同農場員による草取りと見られる。

 

一連の写真を慈江道(チャガンド)出身の脱北者に見てもらった。慈江道は撮影した平安北道と緯度と気候の似た地域だ。

「写真11と13に写っているのは農場員のようには見えません。近隣の住民が山にある個人の畑の草取りをしている様子だと思います。写真14の3人組は農場員でしょう。服装や日焼けと虫予防をしている姿からそう見えます」

金正恩政権は去る5月に、「小土地」と呼ばれる山間の個人の「隠し畑」を厳格に取り締まることを命じ、農場の畑として回収するか、耕作禁止地に指定して植樹させるかした。今も個人が「小土地」を耕す余地はあるのだろうか?

「写真12を見ると、草取りをしている場所に、ひざ丈位の植樹した苗木らしきものが見えます。おそらくその隙間に個人が大豆などを植えていて、手入れのために草取りをしているのでしょう。何も植えられていない土地も見えますね。これは回収された『小土地』が植樹もなされず放置されたものではないかと思います」

写真15

大きな背嚢を背負い畑の脇を歩く女性。写真を見た脱北者によると、トウモロコシの穂の生育は良くないという。

 

写真16

「檻」の外でしゃがみこんでいる男性3人。堤防工事に動員された人だろうか?

 

写真を見た脱北者はこのように解説するが、それよりもトウモロコシ畑の様子から気になることがあるという。

「まず、7月中旬としては生育がかなり悪いように見えます。この時期なら穂がある程度膨らんでいるはずなのに、ごく小さいかまったく見えない。また、畑によってトウモロコシの丈に大きな違いがあります。これは手入れの差。4月に種蒔きした後、肥料を施し雑草を小まめに抜いている畑は良く育ちます。これは個人が管理している畑でしょう。農場の畑は後回しですから」

撮影した北部の平安北道は、8月半ばまで日照りや大雨の被害は報告されていない地域だ。そこでも主食のトウモロコシの生育が芳しくないとすれば、今年の北朝鮮の農業生産はかなり減少するのではないか。写真を解説した脱北者は、こう予測した。(了)