◆「補償に近い制度」への転換必要

国賠訴訟では国の規制権限不行使が「著しく不合理」である場合に違法と判断される。若干の不合理では違法と認められない。つまり、工場における被害はもとより最大のアスベスト消費先である建材の使用に関連する被害について、1959~2004年まで国の規制権限不行使が違法と最高裁に認定されたのは、いずれも重大な規制の不備が存在したということだ。

アスベストによる健康被害は曝露から数十年後に起きるため、現在の被害者はほとんどが国の規制が不十分と認定された期間に吸わされた人びとである。

しかも日本に輸入されたアスベストの用途は約8割が建材である。その結果、現在でもアスベストによる労災認定の半数超である500人超を建設業が占める状態が続く。救済法の認定者は労災で認定されない労働者などがもっとも多く(当然建設業が多い)、それに次ぐのが原因のはっきりしない人びとだ。原因不明の曝露には、兵庫県尼崎市のクボタ旧工場周辺をはじめとする環境被害とみられる人びとも含む。

これまで国は救済法について「民事上の賠償責任とは離れた救済を行う」ものだとして、加害責任に基づく「補償」ではなく、あくまで「救済」だと強調してきた。しかし加害責任が次々国賠訴訟で確定している現状は制度制定時と大きく状況が異なる。紡織や建設といったアスベスト産業の中心における規制が「著しく不合理」だった以上、その周辺などにおける原因がはっきりしない被害者も含めた救済制度をより補償に近い仕組みに転換させるべきとの提言は専門家からも出されていることだ。

救済法は改正5年で見直すことが位置づけられており、今年がその期限だ。「家族の会」は国に対し、「早急に委員会を設置して検討すべき」と訴える。「救済」だからとの言い訳はもはや通用しない。