東京都豊島区巣鴨で今年6月、周辺にアスベスト(石綿)を大量飛散させた可能性の高い不適正工事が実施されていたことが明らかになった。一体どういうことなのか。(井部正之)

事業者が自ら公表していた不適正作業の証拠写真。プラスチックシートの隔離養生が一部しかないことをはじめ、ツッコミどころ満載(施工業者のウェブサイトより)

◆高濃度アスベストを大量使用

現場は巣鴨3丁目にあった4階建ての小さなビル。「おばあちゃんの原宿」と呼ばれ、多くのお年寄りに親しまれている「巣鴨地蔵通り商店街」のとげぬき地蔵尊からすぐの場所だ。レトロな雰囲気から最近では若者にも人気がある。

そんな人通りの多い商店街近くで周辺に危険なアスベストをばらまいたとみられる“事件”が起きた。

アスベストは強力な発がん物質で、吸うと数十年後に中皮腫(肺や心臓などの膜にできるがん)や肺がんなどを引き起こす。これだけの量なら大丈夫というしきい値がなく、とくに中皮腫はわずかな曝露でも発症するとされる。

不適正工事が発覚したきっかけは豊島区の地道な活動だ。ずさんな改修・解体工事が相次ぐ状況から、同区では建築課に提出される建設リサイクル法(建リ法)に基づく分別解体の届け出を共有し、不審な内容があった場合に状況を確認して指導している。建リ法の届け出は比較的浸透していることから多くの自治体で採用されている手法である。

「5月の連休明けに建リ法の届け出があり、そこで吹き付け材にアスベスト『あり』となっていたので、(除去の)届け出があるか照合したところ見当たらず、指導しました」と同区環境保全課は説明する。

区や関係者によれば、現場の建物は延べ床面積210平方メートル。1階から4階まで各階のはりや天井裏にアスベストを含む吹き付け材を施工していた。後に提出された分析結果によれば、アスベストの中でも発がん性がより高いアモサイト(茶石綿)を50~100%(推定70%)使用。クリソタイル(白石綿)も0.1~5%混ぜられていた。とくに危険性が高いアモサイトが高濃度かつ大量に使用されたやっかいな現場だったことがわかる。