◆「予算合わず」不適正施工

そもそも施工時に使用した機材などの写真を撮影することが石綿則などで定められており、記録がないこと自体法令違反の可能性がある。適正な作業を裏付ける証拠をわざわざ撮影しないことなどあり得ず、監督行政から提出を求められた際にあえて除外するわけもない。まともな飛散防止対策が講じられてなかったとみるべきだろう。

同社は区の指導で敷地境界で空気中のアスベストを測定し、検出されなかったことを強調するが、作業停止後の7月1日に実施したもので作業時とは無関係だ。

区はアスベスト除去作業の届け出や適正な施工を5月7日と19日、31日の3回にわたって事前指導している。区環境保全課は「その度に『出します』というばかり。19日もメールが送られてきているんですけど不備があって、指導して再提出してくださいとやりとりしています。その際アスベスト除去の作業を止めていると聞いてました」と明かす。

現場の立ち入り検査は「5月の段階ではやり取りがあり、無視されていたわけではないので」していなかった。ところが6月に不適正作業を強行された。のらりくらりと調子のよい説明をする業者に騙された格好だ。

情報公開で入手した同社の顛末書によれば、事前に再三指導を受けていながらも無届けの不適正工事をした理由について、「アスベストが当初聞いていた3倍あったため、予算に合わなくなって外注できなくなり、工期的なこともあり、自社関係者での撤去に変更した」などと釈明している。

この件では池袋労働基準監督署と東京都産業廃棄物対策課、豊島区環境保全課が「アスベスト対策が不適正」として指導している(ただし池袋労基は「個別案件は答えられない」と回答)。だが都や区は「関係者がそれぞれ自分に都合の良い主張をしていて事実確認に苦慮している」と口をそろえる。

都産業廃棄物課によれば、筆者に外注先と語った男性は好栄工業の役員であることが登記で確認できているという。区環境保全課も顛末書などで同社関係者として名を連ねていると説明する。そもそも同社ウェブサイトで施工の事実や写真を掲載している以上、関係ないと主張するのは調子が良すぎる。

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