鴨緑江の堤防工事に動員された人々。設備とエネルギー難でほとんど手作業だ。平安北道を2021年7月中旬に中国側から撮影アジアプレス

<北朝鮮内部>コロナ関連実態調査(1) 咸北道では3~5%死亡の地域も 「政府集計を信じる人いない」 際立つ幼児と高齢者の死亡

朝鮮中央通信は毎朝、新型コロナウイルス関連の集計値を公表しているが、7月1日は新規の発熱者が4100人で、5月中旬に39万人に達したピーク時の1%水準に激減したとしている。死亡者の累計はわずか73人のままだ。だが、住民の間からは集計値が実態を反映していないという批判が多数出ている。アジアプレスでは、金正恩政権がコロナの国内感染を認めた5月12日以降の北部の状況を調査した。その報告の2回目は両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市についてだ。(石丸次郎/カン・ジウォン

◆ コロナ以外の病気で死亡と処理

事例1

自分が住むのは中心地区のアパート。人民班の住民数42人のうち死者が4人出た。内訳は高齢者2人、幼児1人、青年1人だった。

だいたい恵山市内のどこの人民班でも死者が2~5人ずつ出ていると聞いた。実際にコロナで死亡したのか飢えや他の病気で死んだのか、私も確認できないが、ほとんどが他の病気で死亡したとして処理されている。

◆若い除隊軍人が死亡

事例2

市中心から少し離れた地区に住んでいる。人民班の住民数は50余人で死者は3人出た。内訳は若者2人、幼児1人だった。死んだ若者の1人は結核を患っていた除隊軍人の男性だったが、コロナ流行後に高熱が出て亡くなった。死因はコロナとせず結核と判定していた。

コロナの防疫に関しては今も規則が厳しく、取り締まりも行っている。他の市、郡との移動は遮断されたままだが、6月後半から車の移動が少しずつできるようになりつつある。近いうちにすべて解除されるという噂を聞いた。

◆都市間の物流規制は緩和

事例3

1つの人民班から平均2~3人の死者が出たと見ている。これはコロナと言うべきか、餓死と言うべきか、病気で死んだと言うべきか…曖昧で微妙だ。コロナの封鎖期間に死んだのは、もともと栄養失調か、病気なのに薬がない人たちが多かったからだ。後遺症に苦しむ人も少なくない。聴覚や四肢の麻痺、匂いを感じなくなるなどだ。新興(シンフン)洞の金持ちが住む人民班の場合は、死亡者が全く出ていないということだった。

コロナには、ほとんどの住民がかかったのではないか。労働動員に送る人たちは、コロナにかかって回復した人たちを選んでいる。人々の反応は、むしろ皆がコロナにかかって(集団)免疫を作って、一日も早く中国との国境を開いてほしい(貿易の再開の意)というものだ。

(6月30日時点で)コロナ防疫のための地域間の移動禁止は少しずつ解消している。人の往来は簡単ではないが、都市間の車両移動が可能になった。運転手以外に1人だけ同乗して物資を運べるようになった。貿易会社の車両が数多く往来している。(了)

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図(製作アジアプレス)

 

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