◆透明性ゼロのリスク評価

ちなみに湿潤化しつつ破砕せず原形のまま撤去して同256本検出している事例もある。適切に実施すれば、労働者の口元で測定したばく露濃度で同46本、作業現場の定点で同3.2本ないし3.7本まで低減できているが、ゼロというわけではない。

石綿含有建材を撤去する作業は必ず濃度の高低はあれど、石綿は飛散する。発生源における飛散をどれだけ低く抑えるかが腕の見せ所なのだが、日本においては成形板などいわゆる「レベル3」建材の除去では費用も十分支払われないことが多く、ほとんどまともな対策がされていない。

今回の事案では作業直近ならまだしも、作業区画の境界でわずか4カ所調べただけで飛散がないというのは無理がある。まして測定データもないのに飛散がないと主張するなど無茶苦茶だ。児童らの健康リスクを軽視し、知識のない保護者らを馬鹿にした対応といわざるを得ない。

関連して、市は児童らの石綿ばく露リスクの評価を専門家に依頼しているという。

ほかの自治体では公平性や透明性を確保するため、有識者による委員会方式により公開で検討しているが、横浜市の場合、専門医1人だけ。打ち合わせもしているというが、公開もされておらず、透明性ゼロだ。

市学校整備課に委員会方式で公開実施すべきでないかと指摘したが、「現状ではそこまで考えていません」(寺口課長)との見解だ。

寺口課長は「信用していただけるようしっかりと取り組みたい」という。だが、すでに市側は石綿ばく露リスクのある日数を半分以下に過小評価している状況であり、まともなリスク評価がされるのか疑問である。

こうした市側の対応をみていると、今回の問題の深刻さをどれだけ理解しているのかと言いたくなる。対応を抜本的に見直す必要があろう。

今後の作業についても、結局、作業の半分(午後)については測定もない。そもそも発生源の作業濃度を調べて対策を打つということがないうえ、作業区画境界の測定結果がわかるのは早くて当日夜ないし翌日のため、飛散防止の実効性に疑問が残る。半ば博打のようなやり方である。また石綿の漏えいが起きてもおかしくない。

 

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