パー券不正容疑で刑事告発された平井卓也議員。選挙区は香川一区だ。公式HPより。

◆20人分購入求めて「出席は3人だけでお願い」

初代デジタル大臣を務めた平井卓也衆議院議員が代表を務める「自由民主党香川県第一選挙区支部」(以下、政党支部)が、政治資金パーティー券10枚20万円分の購入を企業に求めながら出席者は3人に絞るよう依頼していたなどとして、平井議員ら2人が政治資金規正法違反の疑いで11月14日に高松地検に刑事告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆パーティー不参加分は寄付金処理しないと違法

告発状によると、平井元デジタル大臣が代表を努める政党支部は2020年3月9日に「高松国際ホテル」で政治資金パーティー「平井卓也を励ます会」(以下、「励ます会」)を開催する予定だった。そのため、パーティー券の購入を求める案内状を配布していたのだが、この案内状が驚きの内容なのだ。

案内状には「チケットご購入依頼の件」と題名があり、依頼枚数として「10枚×20000円=200000円」と既に記載されている。このチケットを購入した団体や会社からは10人参加すると考えるのが一般的だろう。

しかし、その下には「お手元所有参加券番号(ご出席依頼人数3名分)NO.●●~NO.●●」と記載さている。黒塗りされているところには数字が入っている。(情報提供者の保護のため数字部分は黒塗りにして公開します)

さらに一番下には「同封の『FAX返信用紙』(●●~●●)で出席者(3名分)を実行委員会にご連絡いただけますようお願いします」と記載されている。

これが問題のパー券購入依頼書。政党支部が送ったものだ。10人分を購入依頼して参加は3人に絞ることを求めている。情報提供者の保護のため数字部分は黒塗りにしている。

要するにこの案内状が言わんとしているのは、パーティー券は10枚20万円分購入してほしいが参加する人数は3人だけにしてほしいということだろう。政党支部にすれば20万円の売り上げで3人だけが出席するなら、残り7人分の飲食代が浮いて儲かるという計算なのだろう。 この解釈が間違いなければ当然、政治資金規正法違反だ。仮に10枚購入して3人だけ出席したらならば、3人分の6万円がパーティー券収入、残りの14万円は寄付として政治資金収支報告書に記載しなければならないからだ。

◆パーティー延期知らせず参加できず あきれた不誠実

「励ます会」の不正はこれだけではない。「励ます会」は当初、3月9日に開催されるはずだったが、新型コロナウイルスの拡大を受けて2度延期して11月14日に開催された。20万円分のパーティー券を購入依頼しておきながら、この案内状を送付した会社には、延期の案内を行わなかったため誰も参加できなかった。

この場合は、誰も参加していないのだからパーティー券収入としては記載することは違法で、収支報告書には全額寄付金とするのが正しい記載方法となる。20万円を寄付した会社の記載は1社もないので、その会社が払った20万円は寄附金として処理はされていないわけだ。これは収支報告書で確認されている。

平井卓也を励ます会の案内状

◆パーティーは「ボッタクリだ」

平井元大臣らを刑事告発した神戸学院大学の上脇博之教授は次のように話す。

「毎日新聞に情報提供があったようですが、私にもありました。提供された平井議員の政治資金パーティーの案内状を見て驚きました。10人分のパーティー券代20万円を支払うよう某会社に要求した上に、パーティーには3人しか参加させないという内容でした。そのうえ、日程が延期されたのにその案内がなかったので某会社からは1人も参加できなかったというのです。主催した平井議員側は、某会社から1人も参加しないとわかっていたので、某会社の支払った20万円は寄付になりますし、その寄付は強制によるものです。悪質な『ぼったくり』です。」

「励ます会」の疑惑はさらにまだ続く。

「励ます会」の収入は2447万円と収支報告書には記載されている。参加費は一人2万円なので少なくても1238人分のパーティー券が販売されたことになる。ところが、「会場のホテルに取材すると、当日は感染防止対策のため立食パーティーではなく、メイン会場と映像中継でつないだ三会場に間隔を空けて椅子を置き、用意した座席数は計630席だった」と毎日新聞で報道されている。

このことから、少なくても608人は出席しなかったと推測でき、1216万円は寄附として会計処理しなければ虚偽記載となる。

政党支部に今回の政治資金パーティーについて問題点について個別に聞いたところ、次のような回答が一括してあった。「政治資金パーティーは法令に従い適正に開催し、その収支を報告しているところです。政治資金規正法が定める収支報告書の記載事項のほかは同法に鑑み回答していません」

◆「悪質な違法行為だ」

上脇教授は、今回内部告発のあった会社だけではないことを指摘した上で刑事告発した理由を次のように述べた。

「座席数と会場の部屋数を決めるためには、事前に参加者数を把握する必要がありますが、主催者である平井議員の政党支部は、大量のパーティー券を会社に売りつけておきながら、その一部にしか参加させなかったから参加者数を事前に把握できたのでしょう。つまり、寄付の強制は某会社だけになされたわけではなく、他の会社などにも寄付の強制がなされていたことになります。あまりにも悪質な違法行為です。このまま黙認するにはいかないので、刑事告発しました。」

パーティー券収入は、20万円を超えない場合は氏名等を収支報告書に記載しなくてもよいという規定がある。このことを悪用したのが今回の事件である。寄付者の名前を隠して寄付をもらうことが可能になってしまうのだ。今回、このようなことが発覚した以上、寄付金と同様、全てのパーティー券購入者の名前を記載するように義務付けるように法改正するのが、平井議員の所属する自民党の使命ではないか。

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた) 1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

 

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