刑事告発された亀井彰子氏。選挙公報によると元中学校教師とのことである。(選挙公報より)

2人の「かめいあきこ」が立候補して話題となった昨年の衆院議員選挙の島根1区。そのうちの一人の「かめいあきこ」氏が選挙運動収支報告書(以下、収支報告書)を提出していなかったことが10月11日に分かった。島根県選挙管理委員会(以下、選管)が再三、収支報告書を提出するように求めているが、それにも応じていないようである。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆選挙から1年たっても報告書出さず

2021年10月31日に投開票された衆議院議員選挙。島根1区では、今、旧統一教会との関係や記者へのセクハラ疑惑で世を騒がせている細田博之衆議院議長が当選した。一方で、「かめいあきこ」氏が二人立候補したことでも注目を集めた。

前衆議院議員で立憲民主党公認で立候補した「亀井亜紀子」氏。そして、無所属新人の「亀井彰子」氏だ。今回、収支報告書を提出していないことが判明したのは後者の「亀井彰子」氏。

収支報告書は、選挙が終わってから出納責任者が15日以内に選挙管理委員会に提出しなければいけないと公職選挙法で定められている。「亀井彰子」氏の出納責任者は「亀井彰子」氏本人ということが選挙管理委員会への取材で明らかになっている。

つまり、「亀井彰子」氏本人に収支報告書の提出義務があるということだ。しかし、筆者が選挙管理委員会に2月に情報公開したところ収支報告書は「不存在」とされ公開されなかった。

再度確認のため、10月26日に選挙管理委員会に問い合わせたところ、複数回に渡って催促をしているにもかかわらず、いまだ提出されていないことが分かった。選挙管理委員会は催促はできても、強制力を持って収支報告書を提出させることはできない。

亀井彰子の選挙公報。大企業、富裕層、アメリカの方ばかりを見る政治への反対を訴えている。

◆質問状は受け取り拒否され返送されてきた

そのため「亀井彰子」氏にどういう事情で提出しないのかを聞くため直接質問状を郵送したところ、受け取り「拒絶」として返送されてきた。

二人の「かめいあきこ」が立候補することによって、選挙管理委員会の開票作業に影響が出ただけでなく、有権者にも困惑が広がった。その上、「亀井彰子」氏は個人演説会を数回開いただけで選挙運動らしいことをほとんどしなかったという報道もある。ネット上を中心に、立憲民主党の亀井亜紀子に対する選挙妨害ではないかという疑念も提起された。

島根県第1区の選挙は、細田博之氏が9万638票を獲得し当選。立憲の亀井亜紀子氏が6万6847票で次点。「亀井彰子」氏が4318票だった。

亀井彰子氏に郵送で質問状を送ったが受け取りを拒絶されてしまった。

◆まったく不可解な立候補の目的

「政治とカネ」の問題に詳しい神戸学院大学教授の上脇博之教授は、報告書を未だに提出していないことを次のように非難する。

「公選法は選挙に関する収入と支出を収支報告書に記載して提出することを出納責任者に義務づけており、それに違反すると3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処すると定めています。亀井彰子氏は目立った選挙運動をしていないようなので、収入も支出も少額だったかもしれませんが、それでもその収支を記載した報告書を提出しなければ違法です。

自ら出納責任者になっていたのは、立候補した時から収支報告書を作成して提出する気がなかったのではないかと思えてなりませんし、選挙管理員会が再三提出を求めても収支報告書を提出していないのは悪質です」

その上で、選挙に立候補した意図に対しても疑問を投げかけた。

 「無所属新人で後援会もなかったので、地元の新聞社の候補者アンケートに回答するなどして、少なくとも供託金300万円が没収されないだけの得票率10%を獲得しようとするのが選挙の常識なのに、アンケートには一切回答せず、街頭演説など目立った選挙運動もなし。得票率は2・7%だったので300万円は没収されているはずです。何のために立候補したのか不可解に思えてなりません」

当選を目指して同姓同名の候補者が同じ選挙区で立候補することは法律上何も問題ないが「選挙妨害」という疑念を晴らすためにも、「亀井彰子」氏には選挙運動収支報告書を提出し、当選に向けて選挙活動をしていたことを証明してもらいたい。

上脇教授は10月17日、公職選挙法違反の疑いで亀井彰子氏を松江地検に刑事告発状を郵送した。

 

 

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