◆同じ問題繰り返さない再発防止を

続いて(4)の今回の修理が大防法における石綿の事前調査義務に違反しているとみられるにもかかわらず、監督・指導権限を持つ市環境対策課が対応をしていなかったことだ。 筆者が10月18日に問い合わせたところ調査・指導していないことを認め、「工事内容がどういったものだったか改めて発注部局に確認し、必要な指導をしたい」と回答した。認識が甘いといわざるを得ない。 自らの発注工事における不適正事案すらまともに対応できなければ、示しがつかない。現場の監督・指導の実効性が疑われよう。適切な対応を求めたい。 最後に(5)の上記4つの問題が市の発表に含まれておらず、事実認識も甘い、との件だ。筆者は少なくとも発注元の市建築保全課は事業者からの報告書を確認したところで、吹き付け材の見落としや石綿の事前調査ミスがあることに気づいたと考えていた。 だが、同課は「駆動部が痛んでいるので交換した。機械の中に(吹き付け材が)含まれてないとの考えでいた」と否定。市の庁舎管理全体にかかわる問題なども含め、筆者の指摘後に「いろいろわかった」(同課)のだという。 しかし本来なら今回の事案を把握したところで気づいているべきだろう。また発表でも再発防止まで完全には触れることができないにせよ、今後の検討事項や対応として何らか記載すべき重大な内容ではないか。石綿が吹き付け材に含まれていなかったことは良かったことだが、それで問題が終わったかのような対応は甘すぎるといわざるを得ない。 札幌市は今回の吹き付け材「見落とし」事案の反省を踏まえて、有資格者による庁舎の網羅的な石綿調査・管理に進むことを期待したい。またそうした事例が広がるには国による制度改正が必要だ。国交省のソフト路線が有効でなかったことがはっきりした以上、同省は反省のうえで支援も含めた義務づけに踏み切るべきだ。

 

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