◆有資格者の調査「検討」と札幌市

じつは同省は2013年に建物の通常使用時における石綿調査を「的確かつ効率的に把握する」ために「中立かつ公正に正確な調査を行う」資格者として、「建築物石綿含有建材調査者」講習制度を創設している。もともとは建物使用時における石綿調査のための資格制度なのである。 同省は規制による義務づけではなく、自主的に取得してもらうことで拡げるソフト路線で普及を図ってきた。しかし制度開始から7年でようやく1400人超と芳しくなかった。結局、環境省と厚生労働省も含めた3省共管になってから、新たに座学と修了考査のみの「一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)」、戸建て住宅と共同住宅の住居部分のみ調査可能な、さらに簡易の「一戸建て等石綿含有建材調査者(戸建て調査者)」の各講習を創設(これまでの座学+実地研修+各修了考査が必要な調査者は上位の「特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)」に変更)。そのうえで建物などの石綿事前調査で必須の資格として石綿則と大防法において義務づけたことで、ようやく広まった経緯がある。厚労省によれば、調査者(特定・一般・戸建て)数は7月末現在、計13万8778人という。 これまで国や自治体の石綿調査は、素人が建物などの一部を“つまみ食い”したような形で実施しており、過去に調べた箇所についてもその建材の範囲が特定されておらず、建物全体を網羅的に調べていない。そのため今回のような見落としが繰り返される。有資格者が網羅的に調べることで、見落としを極力なくすことが必要だ。調査者講習では、調査できなかった箇所を理由とともに記録するよう教えている。 札幌市における庁舎の吹き付け石綿調査について、市建築保全課は「(現状は)代表的なところ(採取する)という調べ方」と認めた。 今回の見落としを踏まえて、建物の使用中においても市は有資格者による網羅的な石綿調査をして管理すべきだ。とくに厚労省は大規模建築物や改修を繰り返し、石綿の特定が難しい建物は「特定調査者が事前調査を行うことが望ましい」と技術指針で求めており、可能ならもっとも能力の高い特定調査者が通常使用時においても調査をすべきだろう。これはもちろん吹き付け石綿だけのことではない。 そう指摘したところ、市建築保全課は「我々としては、自動ドアから発見したので、それについてはすべて抑えていこうと考えています」と話す。ただし具体的にはまだ決まっていないという。 同課は「いまのままでよいとは思っていない。決定事項ではないが、有資格者の調査をしなければならないんじゃないかなと。所管と話をしながら検討したい」との見解だ。 市の「アスベスト問題対策会議」で庁舎管理の方針などは決めているというので、事務局の市環境対策課にも聞いたが、「すべてを網羅的に調べるのはむずかしい。工事の際に想定されてなかった部分に(吹き付け材が)使われているのであれば、採って確認するということを改めて周知したい」と回答した。 今回の件をふまえて市の施設全体について点検の仕組みを検討することが必要ではないかと聞いたところ、同課は「今回の事案含めて再度確認していきたい」と話す。

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