新たに刑事告発され根本匠衆議院議員。岸田派の事務総長である。選挙区は福島2区だ。公式ツイッターより。

◆派閥で起訴されたのは岸田総理ら4人に

政治団体「宏池政策研究会」(以下、岸田派、宏池会)が政治資金パーティの収入を政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載していなかった問題で、2020年以降、事務総長を務めている根本匠衆議院議員(福島2区選出)が新たに刑事告発をされた。昨年12月まで会長を務めていた岸田文雄総理ら3人と合わせて、岸田派で刑事告発されたのは計4人となった。さらに、2018年以降のパーティ券収入の不記載が新たに見つかったとして、これも告発対象となった。これで岸田派のパーティ券収入の不記載で刑事告発をされた合計額は302万円となった。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

新たに東京地検に刑事告発された根本議員は、2019年12月に亡くなった望月義夫元衆議院議員の後を継いで、2020年1月に事務総長に就任している。事務総長は派閥の「実務を取り仕切っており、同会長と共に収支報告書の記載方針を決定する立場にあった」と、提出された告発補充書で指摘されている。亡くなっている望月元議員については、刑事告発はなかったが、これまでの政治資金規正法違反(不記載)における関りわりを解明するよう求めている。

◆岸田派に新たに発覚した悪質な手口

岸田派の新たな不正疑惑について記しておこう。

政治団体「日本診療放射線技師連盟」の理事会議事録に「畦元議員関係で宏池会のパーティ券を中国ブロック100枚、東京開催100-200枚の購入が必要」と記されていた。2020年10月5日「東京プリンスホテル」で開催される政治資金パーティ「宏池会と語る会」のことである。理事会議事録には、「日本診療放射線技師連盟から15名出席予定である」と記録されていた。

ところが、「日本診療放射線技師連盟」の収支報告書にも、また岸田派の収支報告書にも、この日のパーティに関する記載はない。畦元議員とは、2019年に衆議院比例中国ブロックで繰り上げ当選した畦元将吾衆議院議員のことだ。

この問題を最初に報道した「しんぶん赤旗日曜版」の取材に対して「日本診療放射線技師連盟」の事務担当者は、回答が二転三転した後、「連盟事務局からパーティ券代を支払ったのは10名分」として収支報告書を訂正した。もし議事録とおり15人の参加ならば、パーティ券の相場2万円で購入していたら、支払いは30万円となるはずだ。訂正後もなお疑問が残る。

「日本診療放射線技師連盟」は2021年と2022年の収支報告書でも、10名分の20万円の支出があったと訂正していた。告発状では、両年ともそれぞれ推定で30万円の明細が記載されていなかったとしている。

◆5派閥で約6700万円超が不記載

これで岸田派を含めて、自民党5派閥のパーティ券収入の明細不記載による刑事告発の金額は計6784万円となった。内訳は、安倍派が3290万円、二階派が1436万円、茂木派が838万円、麻生派918万円となっている。岸田派は302万円と5派閥の中で一番少ないが、上記のようなケースがあるため、あくまでも現時点で発覚している不記載分である。

また、5派閥すべてにおいて、法人のパーティ券代の不記載がまったく出て来ていないことも特筆すべき点である。これは、法人には20万円を超えるパーティ券を購入しても収支報告書を提出する義務がないからに他ならない。

告発状を出した上脇博之神戸学院大学教授は次のように指摘する。

「5派閥の政治団体は、『しんぶん赤旗日曜版』から明細不記載の指摘を受けて初めて収支報告書を追加訂正しています。つまり規正法違反を“自白”したわけです。しかし、企業が20万円を超えてパーティ券を購入していたとの追加訂正は一切行われていません。明らかに不自然です。明細を記載したくないのは、政治団体よりも会社の方に多いはずです。

東京地検特捜部の任意の取り調べで、企業の大口購入分を“自白”していないのであれば、特捜部は家宅捜索等の強制捜査を行って会計帳簿等の証拠を押収するしかないでしょう」

自民党は政治刷新本部を設置することを決めた。しかし、その本部長である岸田総理自身が今回の件で刑事告発をされており、最高顧問の麻生太郎自民党副総裁も、本部長代行の茂木幹事長も刑事告発の対象となっている。

パーティ収入を銀行振り込みにするなどの再発防止策を打ち出しているが、それはこれからも政治資金パーティを続けることがすでに前提となっているということである。本気で今回のような「パーティ券不正」を二度と繰り返さないという決意が自民党にあるのか、疑問としか言いようがない。

 

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

 

 

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