遼寧省の丹東市の北朝鮮食堂の女性従業員。コロナ・パンデミックで営業は大不振だったが国境封鎖で帰国もできずにいた。2021年7月に撮影アジアプレス。

◆外国に出るために家を売って賄賂金作る

政府が外国への労働者派遣に積極的なことを、基本的に住民たちは歓迎しているという。市場での商売を含め、この数年、当局が個人の経済活動が厳しく制限したため、都市住民の現金収入は激減しており、海外で稼ぐチャンスを何とかして掴もうとするわけだ。高額の賄賂を使うケースも珍しくないとして、その具体例を両江道の協力者は次のように言う。

「最近ロシアに出国したある人は、住んでいたアパートを売って賄賂の金を準備した。金額は1200ドルで、うち500ドルは借金をして作ったと聞いた。そうまでしてでも外国に行かないと(生計を立てる)方法がないので、手段や方法を尽くしてでも行こうするのだ」

一方、帰国した労働者に対しては、外国で見聞きしたことを一切話さないよう、緘口が命じられている。

「中国の皮革工場に働きに行っていた女性が2月末に戻ってきたのだが、『中国では毎日ご飯に肉のおかずを食べ、どこにでも仕事がたくさんあり、働けばちゃんとお金をもらえるので飢えることはない』と家族に言ったようで、その家のおばあさんが近所で触れ回ってしまい、その女性は当局の調査を受けた」

労働力が不足しているロシアと中国では、安い賃金でよく働く北朝鮮の労働力に対する需要と期待は高い。国連安保理の制裁違反であることは明白だが、朝中露3国の結びつきが強まる中、労働者派遣はさらに盛んになる勢いである。

※アジアプレスは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

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