昨年、国軍は18歳から35歳の男性を対象に徴兵制を敷いた。戦闘に不慣れな若者たちが強制的に前線へ駆り出されている。そのため、解放区に逃亡する国軍兵士が後を絶たない。(新井国憲)

人目のつかない夜、国軍の隙を見てKNDF側の陣地へ逃げた男性(2025年1月 撮影:新井国憲)

◆前線で戦う兵士の拠点

前線のそばの村は閑散としていた。人が住んでいる気配はなく、家屋はもぬけの殻。通り過ぎる車もほとんどが軍用車だ。

案内役のケビン(22)が流暢な英語で「ここまで来れたのは運が良い。そもそも行こうとする人もいない。それくらい危険な地域だ」と話してくれた。

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案内役のKNDF兵士、ケビン。クーデターが始まるまでは学生だった(2025年1月 撮影:新井国憲)

州内は「安全地帯」、「危険地帯」、「戦闘地帯」に区分される。この村は「戦闘地帯」。村の数キロ先で、国軍と抵抗勢力の激しい戦闘が繰り広げられ、ドローンや迫撃砲による爆弾の炸裂音が鳴り止まない。

「俺たちはここで1週間生活することになる。困ったことがあればいつでも言ってくれ」

ケビンに案内されたのは、前線で戦う兵士が集結する司令部の一つ。家主が避難し、無人となった戸建ての住居を基地とし、部隊の司令官と20人ほどの兵士が常駐する。ここで前線部隊の入れ替えが行われるほか、水や食糧が分配されるため、多くの兵士が往来している。

宿舎で休む兵士たち(2025年1月 撮影:新井国憲)

基地の中を覗くと、20代前後の若い兵士たちがリラックスした表情で身体を休めていた。キッチンに陣取った兵士たちは電源タップに群がり、戦争ゲームに夢中だ。別の部屋では、若い兵士が布団に寝転び、微笑みながら恋人と通話していた。

だが、基地のすぐ先は戦場だ。部屋の外では、筋肉質な兵士が1.5メートルほどのランチャー兵器をいじっていた。武器を改造していたのか、「やはり弾頭が合わないな」と呟き、別の弾頭を装填し始めた。

ランチャー兵器の動作確認を行うKNDFの兵士たち(2025年1月 撮影:新井国憲)

時折、箱型の無線機から「ザザッ」と乱れた音が響く。前線部隊から現地の情報が伝えられると、23歳の若い司令官は慣れた口調で応答する。

「仲間が負傷したり、死んだと連絡が入ったりしても動揺はしない。それが戦争だから」

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