◆ドローン兵器襲来
昼下がり、KNDFのバンカー付近で前線の兵士たちと合流した。「最近、国軍のドローンが毎日やってくる。数日前にも、隣のバンカーにドローン爆弾が落とされ、2人の兵士が死んだらしい」。戦況を取材し始めた数分後、近隣の部隊から無線連絡が入った。
「敵のドローンが接近している」
バンカーに逃げる時間はない。近くの茂みを突き破り、陽光を遮る木々に身を隠す。「動くなよ」。隣に腰を下ろしたケビンが囁いた。他の6名の兵士たちは数メートルごとに離れ、上空の様子を窺う。

しばらくドローンの気配はなかった。風に揺られた木々がさわさわと葉をすり合わせ、どこからか鳥のさえずりが聞こえた。のどかにさえ感じる静寂な森の中で、じっと身を潜めていた。
だが数分後、「ブルブルブル」と空気を震わすドローンの羽音が聞こえた。静まり返った森の中に響く異質な機械音。その音は次第に鮮明になっていく。兵士たちは上空を旋回するドローンに耳を澄まし、微動だにしない。緊迫した空気が辺りを支配する。
もはやドローンは真上にいるのではないか。そう思える距離まで羽音は迫っていた。唾を飲み込むことさえ躊躇し、懸命に息を潜める。「聞こえるか、応答せよ!」。無線からこもった声が漏れた数秒後、爆弾の投下を察知したケビンが小さく叫んだ。
「Fall!(落ちるぞ!)」
空気を切り裂く爆弾の甲高い音が響き、目の前にいた兵士は咄嗟に頭を屈めた。「ズドン!」。落雷のような着弾音が森を震わせた。凄まじい衝撃を受け、地面に倒れ込む。「キーン」という耳鳴りが頭に響き、一瞬意識を失ったような感覚に襲われた。「くそ、ドローン爆弾を落とされた!」。ケビンがくぐもった声で繰り返した。

周囲には黒い硝煙が立ち込め、火薬の匂いが鼻をかすめた。ドローン攻撃を受けたショックで呼吸が乱れる。前線の司令官に「大丈夫か?」と尋ねられたが、まともに声を発することができない。精いっぱい首を縦に振った。「負傷者はいるか!」という司令官の呼びかけに「こっちは大丈夫だ」と返すケビン。だが、着弾点付近にいた兵士から応答がない。「前方の仲間たちに爆弾が命中したかもしれない」。煙の充満する着弾点に司令官が走った。
「被弾しているぞ!」。

2人の兵士が爆撃に巻き込まれていた。直撃は免れたものの、炸裂した爆弾の破片が体中に突き刺さったのだ。倒れ込んでいた負傷兵は顔を引きつらせ、苦しげに太ももを押さえている。「大丈夫だ、急いで村に戻るからな!」。ケビンは銃に付属するゴムバンドを取り外し、止血用の帯として負傷兵の太ももを縛った。
「また爆撃してくるかもしれない。早く撤退するぞ!」。応急処置を終え、司令官を除く6名で最寄りの村へ退却する。片足を引きずって歩く負傷兵の姿が痛々しい。左腕は破片に肉を抉られ、血が滴っていた。

「ブォン…ブォン!」。兵士が壊れかけのバイクにエンジンをかけた。路上に停めていたバイクで負傷兵を運ぶようだ。ケビンも「お前はそこの外国人(記者)を頼む!」とサングラスの兵士に叫び、背に乗せた負傷兵と急坂を駆け下りていった。
「おれたちは走るしかない。大丈夫だ、道路まで行けば迎えの車が来る」とサングラスの兵士。「もしドローンに見つかったら」という不安が激しく渦巻く。姿の見えない兵器に恐怖心を煽られながら、全力で丘の中を走り抜けた。