カレンニー諸民族防衛隊(KNDF)などの抵抗勢力は幾多の戦闘で勝利を重ねる一方、多くの犠牲を払ってきた。KNDFの副司令官によれば、兵士の死傷者数は600人以上にのぼる。戦闘で体の一部を失った兵士たちが療養する極秘施設に足を運び、そこで暮らす人々の言葉に耳を傾けた。(新井国憲)

ミャンマー内戦4年 解放区潜入1ヵ月 タイ国境・カレンニー州からの報告(1)日常化する空爆 到着直後に戦闘機が襲来

国軍のドローン攻撃で片足を失った兵士(2025年1月 撮影:新井国憲)

◆負傷者増え、リハビリ施設を創設

リハビリ施設で療養する兵士たち(2025年1月 撮影:新井国憲)

山腹に設置された施設は、天然の要塞だった。道のりは険しく、螺旋状に弧を描いた急坂が続く。苦労の末にたどり着いた施設は何本もの大樹で囲まれ、木々から伸びた枝葉の群れに覆われていた。そびえ立つ山々に溶け込み、上空から身を隠すには絶好の場所だ。

「ここは衛星写真にも映りません。すばらしい場所を用意してくれた神様に感謝しています」

リハビリ施設責任者のナインさん(55)は、そう誇らしげに語る。この村に長く暮らすナインさんは、設立の企画段階からこの施設に携わってきた人物だ。

リハビリ施設の責任者ナインさん(2025年1月 撮影:新井国憲)

2021年5月に始まった国軍と州内の抵抗勢力による戦闘は徐々に苛烈さを増し、体を酷く損傷した兵士で溢れた。心身ともに傷が癒えず、行き場を失った兵士たちの姿は見るに耐えなかった。

「人々が立ち直れる安全な場所が必要だ」

そう思い立ったナインさんは、州内の抵抗勢力を牽引するカレンニー州諮問評議会(KSCC)や村の協力を得て、2022年6月にこの施設を立ち上げた。体の一部を失った人々に車椅子や義足を提供し、療養後の再起を促す。

「タイでさえ、義足や義眼の入手は困難です。患者への提供が1年以上かかることもあります。他にも食糧やリハビリの器具が不足し、充分な療養環境ではありません」

現在、看護師や調理師、警備員など、12人の職員が体の自由がきかない人々の生活を支えている。これまで世話してきた患者は約300人。そのほとんどは負傷し、戦闘を離脱した兵士たちだ。

「戦闘で顔に損傷を負い、別人のようになった若者がいました。彼の潰れた目を見たとき、とても心が痛みました」

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