◆ 国家鉄道を利用する「稼ぎ汽車」まで登場

キム・ミョンオク氏によると、国が鉄道を利用して商売をする事例もあったという。

「『ポリ(稼ぎ)汽車』までありました。内燃機関車で、ディーゼル油を使います。やかましい音と真っ黒な煙を吐き出して、『国家が商売する』と走っています。『サービ車』より少し安いです」

(参考写真)荷台に大勢の人を乗せる「サービ車」。 商人が荷物を運ぶのにも利用した。2013年3月、平安南道平城市で撮影アジアプレス

「サービ車」の呼び名は、「サービス」に由来するといわれている。「ポリ(稼ぎ)車」とも呼ばれる。立ち遅れた既存の国営交通網に代わり、車両を所有する個人や企業が、車両に人や物品を積み、運ぶ仕組みだ。「苦難の行軍」以降、急速に拡大した市場経済の発達を下支えした。

キム・ミョンオク氏の話では、ついには「ポリ(稼ぎ)汽車」まで誕生したということだ。電力不足が深刻な北朝鮮では、電車の運行は極めて不安定だ。代わりに、ディーゼル機関車を稼働させ人と物資の輸送の需要を満たして稼いでいるというわけだ。

この他にも一部企業に漁業権を与える代わりに漁獲物を徴収したり、電子式カードを導入して、市場での決済や市場利用料を徴収したりするなど、それまで個人、あるいは腐敗した中間幹部、地方政府が得ていた利潤を、中央政府に集中させるための集金システムが短期間に構築されていったのだ。

次回も引き続き、当局が財政危機の活路とした執拗な住民収奪事例について報告する。(続く)

北朝鮮地図 製作アジアプレス

<北朝鮮漆黒のコロナの4年を照らす>(6)人災によって広がる混乱と無秩序… 新型コロナウイルス感染症の生存者が語る北朝鮮版「犯罪との戦争」

★新着記事