◆集団的自衛権の行使で自衛隊が米軍とともに先制攻撃も

自衛隊は米軍が進める統合防空ミサイル防衛(IAMD)を導入する。それはミサイル迎撃と敵基地などへのミサイル攻撃を一体的に運用するもので、敵からのミサイル攻撃を未然に防ぐための先制攻撃もふくまれる。

宮古島の陸上自衛隊駐屯地の12式地対艦誘導弾(ミサイル)部隊の車両(2023年12月5日撮影)

日本政府は、米軍の「統合防空ミサイル防衛」と自衛隊の「統合防空ミサイル防衛」は別物だと説明する。しかし、自衛隊のミサイルによる敵基地攻撃は、情報収集・警戒監視の段階から計画の立案、攻撃目標の割り当て、指揮・統制、火力発揮(攻撃)、攻撃の成果の評価にいたるまで、「日米共同対処」でおこなうことが、防衛省の「反撃能力について」という部内文書には明記されている(『従属の代償』布施祐仁著 講談社現代新書 2024年)。

宮古島の航空自衛隊基地のレーダー(2023年12月5日撮影)

集団的自衛権の行使において事実上、米軍の指揮下で自衛隊も長射程ミサイルでの敵基地・敵国への先制攻撃までおこなうことになりかねない。アメリカの戦争の片棒をかつぐことになる。その戦争に日本を巻き込んでしまう。

浜田靖一防衛大臣(当時)は記者会見で、「他国が我が国に対して武力攻撃に着手した時」には、こちらから攻撃することができる趣旨の見解を示した(『朝日新聞』2022年12月21日朝刊)。

宮古島の航空自衛隊基地の電波傍受施設(2023年12月5日撮影)

これは日本がまだ攻撃されていない段階であっても、長射程ミサイルでの先制攻撃を可能とするものだ。

しかも、日本が攻撃されていなくても、安保法制の「存立危機事態」(集団的自衛権の行使が可能となる事態)の要件を満たせば、アメリカなど密接な関係にある他国への第三国からのミサイル発射準備など、「武力攻撃の着手」の時点で、敵基地攻撃は可能と解釈できる岸田内閣(当時)の政府答弁書も、2022年5月17日に閣議決定された。

まさに集団的自衛権の行使として、米軍とともに第三国に対して国際法違反の先制攻撃をすることもありえるのである。その第三国が日本を攻撃しようとしていなくても。(つづく)

吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。

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