◆復旧支える支援
日本は、さまざまな形でウクライナへの支援をおこなってきた。国際協力機構(JICA)を通じた「緊急復旧計画」では、9分野(地雷・不発弾対策、瓦礫・災害廃棄物処理、運輸交通、電力・エネルギー、水供給、下水、保健医療、教育、農業)の緊急復旧に必要な資機材が送られ、事業の総額は224億円にのぼる。
その一環として、ドニプロにも復旧作業用の車両や機器の一部が到着した。熱供給ボイラー施設棟のわきには、クレーン車、ホイールローダー、ダンプ、給水車、発電機が並んでいた。いずれも日本国民からの支援を示す「From the People of Japan」のラベルが付いている。
これまでに、重機や給水車など計16台のほか、発電機221機が届けられた。すでにミサイルや自爆ドローン攻撃の被害現場に出動し、復旧活動に効果を上げているという。
「日本の支援が市民の命を救っています。何よりも感謝したいのは、ウクライナ国民が置かれた過酷な状況に、日本の皆さんがずっと心を寄せ続けてくれているということです」
クリメンコさんは、思いを語った。


◆「ウクライナでは誰もが家族か知人をこの戦争で失くしています」
ミサイル攻撃に加え、とくに今年に入って自爆ドローン「シャヘド」の飛来数が増え、被害が広がっている。(注:「シャヘド」はイランが開発し、ロシアに供与した自爆攻撃ドローン。のちにロシアがライセンス生産し、現在は「ゲラン」と呼ばれるが、「シャヘド」の名が定着している)
「昨夜も2機の自爆ドローンが自宅のすぐ近くに飛来し、防空部隊が対空砲火を浴びせました。破片の一部は庭に落ちました。こんなことが、もう当たり前になってしまいました」
クリメンコさんは、スマホで撮影したドローン迎撃の映像を見せてくれた。

インフラ設備そのものを狙った攻撃も少なくない。市民に心理的な圧迫を加え、疲弊させるためだ。ボイラー施設も標的となる可能性がある。だが、彼は今後も町にとどまり、復旧作業の現場に向き合い続けると話す。
「ここは私たちの国です。市民が暮らす町があり、それぞれの家族がいます。人びとの命を守り、生活をつながなくてはなりません」

クリメンコさんの弟は、兵士としてザポリージャ南部の前線オリヒウで戦っていたが、昨年、任務中に戦死した。14歳の娘がいたという。
ご心痛をお察ししますと、私が言葉をかけると、彼はこう答えた。
「私が特別ではありません。ウクライナでは、誰もが家族か知人をこの戦争で失くしています。悲しく、つらい思いを共有しているからこそ、皆が互いに助け合うのです」

◆USAIDの支援停止に広がる困惑
トランプ政権の誕生で、アメリカの対外国際援助機関だった国際開発局(USAID)が事実上の解体に追い込まれた。これまでウクライナ支援で進められてきたさまざまなプロジェクトも停止し、各方面に影響が広がった。

テプロエネルゴでは、侵攻直後、USAIDから緊急援助で掘削機を受け取った。その後、今年3月まで熱供給事業計画をUSAIDと進めてきた。だがトランプ政権になると、突如、事業が打ち切られた。ウクライナ側で事業計画を担当した会社への支払いもなされていない状態という。
技術部門を管理するセルゲイ・コンスタンチンさん(38)は、落胆の表情を隠せない。
「アメリカの国内事情もあるでしょうし、私たちも支援頼りになってはなりませんが、突然の中止で末端の現場は混乱し、困惑しています」

戦争が長引くなか、国際社会のウクライナへの関心は徐々に薄れつつあり、支援も減っている。また、大国の政治の都合で、支援の現場が翻弄される事態も生じている。一方で、ロシア軍の攻撃は日増しに激しくなっている。関心を失わず、苦境にある市民に思いを寄せる。それが、戦禍に生きる人びとの命を救うことにつながる。













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