日本から「ウクライナ緊急復旧計画」の一環としてとして送られた重機。ライフライン復旧に役立てられている。(2025年4月・ドニプロ・撮影・玉本英子)

◆日本の重機がインフラ復旧に

ロシア軍によるミサイル攻撃。ひとたび集合住宅に炸裂すると、住民は爆発による直接の被害だけでなく、給水や暖房供給の停止に直面する。ライフライン復旧に、日本が支援した重機や発電機が投入されている。ウクライナへの「日本の支援」の現場を追った連続シリーズ・全3回。(取材・写真:玉本英子・アジアプレス) (3/3)

2023年1月のミサイル攻撃では、集合住宅に着弾し、子ども6人を含む46人が犠牲となった。爆発による直接の被害だけでなく、隣接する住宅棟一帯の送電、給水、暖房も停止することもあり、住民のライフラインが危機にさらされる。(2023年1月・ドニプロ・国家非常事態庁DSNS公表映像)

◆インフラ破壊が住民の命を脅かす

住宅地に炸裂するミサイルや自爆ドローン。爆発と火災、そして建物の崩落で、住民の命が奪われている。被害はそれだけではない。建物につながるボイラー配管が損傷した場合、地区一帯が暖房供給の停止に追い込まれる。また、送電網が破壊されると停電だけでなく、給水もストップする。

ミサイル攻撃を受けた集合住宅の隣棟に住む女性。いつ攻撃されるかわからない恐怖、ライフラインが断たれる不安のなかで暮らしているという。(2025年4月・ドニプロ・撮影・玉本英子)
ウクライナの集合住宅では、いまもソ連時代の暖房システムが一般的だ。電力施設やボイラー施設から太い配管を通して温水が供給され、各戸のセントラルヒーティングに利用される。寒い冬場でも快適だ。この配管が損傷すると建物全体への暖房供給がストップする。(2025年4月・ドニプロ・撮影・玉本英子)

ウクライナでは、いまもソ連時代の暖房供給システムが広く使われている。都市部では、区域ごとに熱供給の巨大なボイラー施設があり、太い配管を通して住宅棟に温水を供給し、セントラルヒーティングに利用するシステムだ。冬季の気温がマイナス10度以下になる地域もあるウクライナでは、暖房停止は命にかかわる深刻な事態を招く。

市内の暖房用の熱供給するボイラー施設。地区ごとにボイラーがあり、ドニプロ市内全体で374カ所設置されている。このボイラーだけで3800戸に熱供給している。白い給水車は日本の支援でJICAを通じて送られた。(2025年4月・ドニプロ・撮影・玉本英子)

事業公社テプロエネルゴは、ドニプロ市のほぼ全域に熱暖房を供給するシステムを担う。同社の統括責任者、アンドレイ・クリメンコさん(43)は話す。

「ミサイル攻撃は、爆発の直接的な被害に加え、ライフラインを断ち、地区全体に大きな影響を及ぼします。復旧の遅れは、住民の命を脅かします」

爆発でボイラーや給水設備が損傷すると、即応チームが現場に駆け付け、緊急復旧作業にあたる。その活動を支えているのが、日本の重機や発電機だ。

復旧作業に使われるコマツのバックホーローダー。掘削できるバックホーが付いている。(2025年4月・ドニプロ・撮影・玉本英子)
日本国民からの支援を示す「From the People of Japan」のラベル。(2025年4月・ドニプロ・撮影・玉本英子)
発電機は、現場での用途にあわせ、これまでに計221台が送られた。市内各所のボイラー施設に配置された。これはHIMOINSAヤンマーの発電機。(2025年4月・ドニプロ・撮影・玉本英子)

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